第10章 強く。
「いいんじゃない。別に。
あんたらしくて。」
家康が目をそらしつついう。
耳がちょっとあかくなってるから
きっとまた照れてるんだろうな。
「そうだな。確かに甘いが、まぁ貴様はそれでよい。
むしろそれがよい。
では、俺もここで食べるとしよう。」
まだ残っているおにぎりを手に信長様が腰かける。
「信長様がいるとかえって落ち着きませんけどね。」
家康が小さくつぶやく。
「なんだ、文句あるのか。」
「……いえ、別に。」
そういいながら弁当のおかずに箸を伸ばす。
「ふふふ、ありがとうございます。」
たわいないことをしゃへりながら
お昼の時間が流れた。
心持ち、家康がお弁当を食べる早さが
いつもよりゆっくりだったのは
たぶん誰も気付かなかった。