第16章 詐欺師の森
「...よう気づいたのぅ」
「人の気配には敏感でね」
「俺のこともそうじゃが言っとるのはゾロアークのほうじゃ。何でわかったんじゃ?」
やはりゾロアークは仁王のポケモンだったらしい。すたすたと仁王に近づくと彼の右手に顔を擦り付けて甘えだした。
「私の仲間にもゾロアークとグラエナがいるの。仮にイリュージョンで他のポケモンに変化しても、手触りって変化しているポケモンと若干違うことがあるから」
「成る程のぅ...」
仁王(とゾロアーク)はフェリシアと一定の距離を保ったまま湖畔に腰をおろした。
二人の間を若干温い初夏の風が通り抜ける。
しばらくお互いに無言が続いたが、先に口を開いたのは仁王だった。
「...お前さん、何でここにおるんじゃ?」
「...教室がうるさいから」
「自分で撒いた種じゃろうが」
「好きで撒いた訳じゃない」
「そこまでしてバトル部に入りたいんか」
「私はただ単にあいつらが許せなかっただけ」
徐々にヒートアップしていく仁王とフェリシアの言い争い。
「参謀や赤也が言っとった。お前さんがとんでもないツテで愛宮を潰したと」
「参謀って?」
「柳蓮二じゃ」
「あぁ、成る程......まぁとんでもないかどうかはわかんないけど、ツテで潰せたのは確かね」
「......何で、」
「?」
「何でそんなことしたんじゃ!」
「?!」
突然声を荒げる仁王。
「何でじゃ?!お前さんには関係ない、俺らの問題だったはずじゃ?!なのに何故首を突っ込んだ?!」
「ぐっ?!」
フェリシアに詰め寄る仁王。そのままフェリシアの襟を掴んだ。