第16章 詐欺師の森
(こんなに静かななの、いつ以来だろ...)
木葉の間から差し込む日の光を見つめながら、フェリシアは目を閉じたが、不意に、カシャンカシャンという音が聴こえ、フェリシアは目を開けた。
※以降、副声音で
「どうしたの、テレジア?」
「いエ、只フェリが疲れているように見えましたのデ。大丈夫でございますカ?」
何処と無く片言に聴こえるこの声の正体はなんと首に水色のリボンを巻いたマギアナ。
先程の音は、テレジアが歩いている時の音だった。
フェリシアの隣にちょこんと(実際にはカシャンと)座るテレジア。
「ありがとテレジア...ちょっと頼みが在るんだけど」
「何でございましょウ?」
「『アレ』、やってくれない?」
「畏まりましタ」
テレジアが身体を揺らし始めると、オルゴールのメロディーが聴こえてきた。
「♪~」
(オルゴールのメロディーはポケモン映画『ボルケニオンと機巧のマギアナ』の主題歌『ポストに声を投げ入れて』です)
いつの間にか、遊んでいたはずのフェリポケ達が集まっており、更にこの森に生息する野生のポケモン達までもが集まってきた。
何とも言えない心地好い空間がそこにはあった。
「ガウ...」
とそこへ、一匹のグラエナがやって来た。
(野生じゃない...)
グラエナの身のこなしかたからすぐに野生でないことを見抜いたフェリシア。
そっと手招きすると、グラエナはとことことやって来た。そしてフェリシアの目の前できちんとお座りをした。
「撫でてもいい?」
「ガウ」(あぁ)
突然撫でると噛みつかれることもあるので、一声かけてからグラエナを撫で始めたフェリシア。
その艶やかな毛並みに手が触れた時だった。
(あれ...?)
確かに犬のような質感だが、何かが違う。
(どこかで触ったような...いや、触ったことありすぎる...この感触、まさか)
「君、ゾロア、いいえ...ゾロアークでしょ」
言うや否やグラエナが光だし、姿を変えた。
その姿はフェリシアが指摘した通り、ゾロアークだった。
「まさかイリュージョンで近寄ってくるとはね...ねぇ、そこにいるんでしょ。出てきたら」
「なんじゃ、気づかれとったんか」
木の陰から出てきたのは、未だに和解してないレギュラーメンバーの一人、仁王だった。