第10章 命の灯火
――その時だった。
カタッ
と、小さくタマゴが揺れた。
「あれ、今...」
「動いたよ」
「もうすぐ生まれるのかな?」
「そういえば、さっきより暖かくなってるね~」
「必死に生きようとしてるんだな」
「頑張り屋さんなのね」
「生まれておいで、皆、君に会えるのを楽しみにしてるよ」
更に、タマゴに変化が起こる。
ピキッ...ピキピキピキッ!
そしてタマゴにヒビが入り、光始めた。
「これって?!」
「生まれるぞ!」
「スゴいスゴい!」
「うわぁ!」
「生まれておいで!」
「どんな子かな?」
「男の子?」
「女の子?」
やがてタマゴは目映いばかりの光を放ち、そして、
パァン!
と、弾けた音を立てて、一匹のポケモンがこの世に誕生した。
「...う?」
フェリシアの膝にいたのは、小さな小さなイーブイ。だが...
「これって、イーブイ、だよね...?」
「色違い、にしては色薄すぎない?」
生まれて来たイーブイは全身真っ白で、更に本来黒いはずの目は少し赤みがかかっている。
「イーブイの色違いって確か灰色だったはずじゃなかった?」
「...この子、アルビノかもしれないですね」
「アルビノって?」
「先天性色素欠乏症とも云われる遺伝子疾患です...でも、私も初めて見ました」
近づいてきたコーラルがイーブイを見つめながら説明した。
「雪みたいで綺麗じゃねーか」
「目も可愛らしい色ですね~。お花みたいです~」
「雪と花、か...」
カポネとミルフィーがイーブイの容姿について感想を言っているのを聞きながらフェリシアはそっとイーブイを抱き上げ、自分と目線を合わせた。
「はじめまして、生まれて来てくれてありがとう。私はフェリシアっていうの。君のママだよ」
「まま?」
「そう。これからよろしくね、ユキカ」
「ゆきか?」
「うん。君の名前。身体は雪みたいだし、目は花みたいだから、雪の花でユキカ」
「もしかして、さっきカポネとミルフィーが呟いてたのを名前にしたの?」
「まさか俺らが名付け親とはな...,」
「なんだか嬉しいです~」