第28章 少女の背負うモノ
「誘拐された先でフェリシア達を待っていたのは、地獄のような日々だった......毎日薬品を投与され、時には麻酔無しで身体にメスを容れられることもあったらしいんだ」
プラターヌ博士の口から出てくる、少女のおぞましい過去。
「与えられる食料が足りなくて、人間に歯向かって、投与された薬に耐えきれなくて、自分が手にしてしまった力を暴走させて、それぞれの理由で次々に殺されていった」
「力?」
引っ掛かる言葉に、仁王が疑問符を浮かべた。
「............ポケモンの力、だよ」
「「「「「「「「?!?!」」」」」」」」
フィアンナからのカミングアウトに、絶句する少年達。
「彼奴らは、人間にポケモンの力を植え付けようとしていたんだ...そのせいで、一体どれだけの人間とポケモンが犠牲になったことやら...」
「...でも、それって、一体何の為に...」
「知らない。頭イカれた連中の考える事なんて知りたくもないし」
幸村の呟きに対し、フィアンナは吐き捨てるように答えた。
「フィアンナも...?」
「...私はその逆。私は人間の遺伝子を無理矢理植え付けられたポケモン。その証拠に、」
ほら、とフィアンナは彼らに自らの耳を見せた。それは人間のよりも少し大きく、異なった形をしていた。
「...ついでに、進化しないと覚えられない筈の技が使えるようになったの。その対価に進化出来なくなっちゃったけど」
何てことの無いように告げるフィアンナに、少年達は言葉が出なかった。
「...フェリシアには既にあるポケモンの遺伝子が植え付けられていたんだけど、彼奴らは更に別のポケモンの遺伝子を植え付けようとしたんだ」
フィアンナは続けた。
「...でも、流石にフェリシアも耐えきれなくて、力を暴走させた......でも幸運にも、暴走させたその力は研究所を半壊させたんだ...だから、逃げ出せたんだ」
「因みに、逃げ出す最中に私はフェリシアと出会ったの。それから逃げて逃げて、路地裏で倒れこんだ私達を博士が保護してくれて、それで今に至るの」
フィアンナがそう締め括った。