第28章 少女の背負うモノ
「...シンオウ地方のとある小さな町に、ある一組の夫婦がいたんだ。この夫婦にはなかなか子どもが授からなかったらしくってね、やっと子どもが出来たって知った時の喜び様はもう凄かったらしいんだ」
プラターヌ博士は静かに語りだした。
「で、産まれてきたのは女の子だった。ご両親はとても喜んだそうだよ......でも、それは半日と続かなかった...女の子が産まれた次の日の朝、新生児室に我が子を迎えに行った母親が見たものは、もぬけの殻になった新生児用のベッドだった......その女の子だけじゃない、他の新生児も皆居なくなっていたんだ」
「?!」
誰かが息をのんだ音が聞こえた。
「女の子の両親も、他の新生児の親も病院や警察も死物狂いで探した......けど......結局、誰も何も見つけられなかった」
「...誘拐、されたってこと、ですか?」
幸村が掠れた声で訊ねた。
「警察はその方向で捜査していたよ...まぁ、産まれたばかりの赤ん坊は立つどころかハイハイだってできないだろうしね」
プラターヌ博士はちょっと苦笑しながら言った。
「...まさか、その誘拐された女の子って......」
「御察しの通り、フェリシアだよ」
フィアンナが答えた。若干疲れているように見える。
「......で、」
プラターヌ博士は苦笑していた顔を真面目なものに戻した。
「ここから先の話はフェリシアから聞いたものだけど、あまり彼女も話したがらないから全部って訳じゃないんだ...だから、何かわからないことがあっても僕には答えられない...ごめんね」
プラターヌ博士は頭を下げた。
(フェリシアが話したがらない程の過去......)
幸村は、恐らく自分が想像しているよりもかなり重たいものなのだと直感した。