第22章 稲妻と波動
「この森でラクライなんて初めて見た」
「それはそうだろう。本来、この森にラクライは生息していない」
「え?それじゃぁあの子...」
「トレーナーとはぐれたか、トレーナーに捨てられたかと思われる」
ラクライは教師やバトル部員のポケモン達に囲まれているが、攻撃態勢を解こうとはしない。
時折バチバチと音をたてて火花が散るその身体は傷だらけだった。
「ガルルルル...」
「...え?!」
「どうかしたんかフェリ?」
ラクライの唸り声を耳にした瞬間、驚愕の表情をしたフェリシアに仁王は疑問を投げ掛けた。
「...『ここ、どこ?ご主人様、どこ?』って言ってる」
「ラクライがか?」
「うん」
「じゃあ、トレーナーとはぐれたってことか?」
「ううん、多分違うと思う」
「違うって、どーゆーことだよい?」
「あのラクライも私のマーブルと同じ、捨てられたポケモンかもしれない」
「ですが、虐待されて捨てられたポケモンがトレーナーを探すとは...」
「私のマーブルは、捨てられてもトレーナーを憎んでなかった。あの子も多分、同じだと思う」
フェリシアの目線も、ラクライに釘付けのままだった。
「いい加減、彼奴をどうにかしないと...」
「余計な仕事増やしやがって...」
教師陣はラクライのことよりも自分達の心配。
「...呆れたね」
「全くだ」
ポケモンより我が身の安全優先な教師陣に対し、ため息をつく幸村と真田。
そんな中、動いた人物がいた。
「...フェリ?」
フェリシアはそっとラクライに近づいていく。
「おい、危険だぞ!」
「離れろ!」
教師陣の言葉にも耳を貸さないフェリシア。
「ガルァ!」(来ないで!)
「!」
辺りに電撃が走る。ラクライが放電を放ったのだ。
(威力が弱い...かなり弱ってるわね...)
一歩ずつ、フェリシアはラクライに近づいていく。
フェリシアの手がラクライに触れるという距離まで近づき、ラクライの目線に合わせてしゃがんだときだった。
「フェリシア!危ない!」
「っ!?」
ラクライがフェリシアの左肩に噛みついたのだ。
「フェリシア!」
「来ちゃ駄目!」
「?!」
柳達が駆け寄ろうとしたが、フェリシアは大声でそれを制した。