第21章 氷の王国
「マジマジスッゲェェ~!フェリシアちゃん、カッコよかったC~!」
「うわっ?!あ、芥川君?」
観客席にいた慈朗が飛び出してきた。そしてその勢いのままフェリシアに抱きついた。
「ジローって呼んでほしいC~」
「えぇっと...ジロー君?」
「ジロー...」
忍足はもう何も言わないことにしたらしい。
呆れたような笑みを浮かべながらフェリシアのとこへ歩いてきた。
「まさか、ホンマに跡部に勝つなんてな...」
「忍足君...ちょっとギリギリだったけどね。でも、ポプラが頑張ってくれたから、勝てたんだし...ありがとうポプラ。無茶言ってごめんね」
「ドーダ」(今更だな)
フェリシアはポプラの身体をそっと撫でた。
その時だった。
パン、パン、パン、パン、
誰かが拍手する音が聞こえてきた。
振り向くと、ここの教師であろう背の高い男性の姿が。
「見事だった。今のバトル」
「えぇっと...」
「...榊太郎、俺らヒョウテイバトル部の監督や」
戸惑うフェリシアに、忍足がそっと耳打ちした。
「相性最悪な状況でありながらも、その奇想天外な発想で見事な逆転、本当に素晴らしい」
「あ、ありがとうございます...」
「ヒーコヒコ...」(胡散臭い...)
榊の何か芝居かかったような物言いにフェリシアもフィアンナも若干引いている。
「君のような人材がリッカイにいるのは勿体無い。是非、我がヒョウテイに来てもらいたい...いや、ヒョウテイバトル部の部長になってもらいたい」
「「「「?!」」」」
榊の言葉に、周りの空気が凍りついた。
「ちょぉ待ってください監督!ヒョウテイの部長は跡部ですやろ!」
榊に食って掛かる忍足。しかし...
「公式戦でなくても、一度負けた者を部長の座に、レギュラーとしても置いておくわけにはいかない。敗者なぞ必要ない。それこそ、我がヒョウテイの恥だ」
「?!」
榊の言葉は、つまり跡部がもう不要だと言っていることに変わりはなかった。
そんな榊の言い分に、フェリシアはキレた。
「...ふざけんな!」
フェリシアは榊の目を睨み付けながら言い放った。