第13章 誰が為に戦う
「…おいおい…!なんだおまえ、遅れて助けに来てその格好…イレイザーヘッドに似てるじゃないか?」
不本意なゲームのエンディングに退屈していたのか、死柄木は、突如現れた向に向かって嬉しそうな声をあげた。
(ヤバイ!!ヤバイヤバイヤバイヤバイ!!)
さっきの敵たちとは明らかに違う。
死柄木の視線が向に逸れたのを見て、緑谷が右腕に力を込める。
「手っ放せぇ!!」
「脳無」
スマッシュ!!!と振りかぶった緑谷の拳は、確かに何かに触れて、衝撃と爆風のような旋風を周囲に巻き起こした。
つむじ風で巻き上がった土煙が晴れて、すぐに。
緑谷が殴ったものは死柄木ではなく、彼の呼び声に答え、間に飛び込んで来た脳無の身体だったと気づく。
「いい動きをするなぁ…スマッシュって…あっちがイレイザーなら、おまえはオールマイトのフォロワーかい?」
「…っ!?」
(全然…効いてない!?)
峰田がウワァアと泣き叫んだ瞬間、脳無の身体が宙へと浮いた。
向の方へと引き寄せられた脳無は無反応のまま、虚空を見つめる。
ハッとした死柄木は向を振り返り、「おい!!」と不満そうな声をあげた。
『ーーー対象のベクトルを変換』
潰れろ。
と、向は呟いて、自身の胸の前で両方の掌を、パン!と合わせた。
ぐしゃり、という音を立てて、脳無の身体が、「人体であればおかしな方向」へと折り曲げられた。
ベキ、バキ、という痛々しい音を立てて、脳無の首が、腕が、足が、不自然な方向へと折り曲げられ、まるで一つの球体状の肉塊となった後、地面に叩き落とされた。
即座に死柄木と黒霧に向き直った向は、両手を頭上に向かって伸ばし、俯きながら、呟く。
『ーーー加速、ベクトル収縮、加速、加速加速加速加速』
彼女の頭上に、可視化できるほどの光を放ち始めたベクトルが集まり、高電離気体(プラズマ)が発生する。
発光するその現実離れした現象に緑谷が息を飲んだ瞬間、死柄木が怒鳴った。
「おい黒霧!!早くあいつどっかにやれ!!」
「…それより、早く引き上げましょう!プロヒーローが到着してからでは、逃走が困難です!」
「なんでもいい、あいつにアレを撃たせるな!!」