第11章 嵐の前の騒々しさ
超人社会は、個性の使用を資格制にし、厳しく規制することで一見成り立っているようには見える。
しかし一歩間違えれば。
容易に人を殺せる「いきすぎた個性」を個々が持っていることを忘れないでほしい。
真剣に話していた13号は、言葉の最後を、明るく、楽しげな声で締めくくった。
「この授業では…心機一転!人命の為に個性をどう活用するかを学んでいきましょう」
君たちの力は、人を傷つける為にあるのではない。
助ける為にあるのだ。
そう語る13号に視線を向けることなく、少しうつむきがちな生徒が1人。
その彼女の首の角度に気づき、「こんなカッケー話聞かずに寝てんのかよ!」と上鳴が小声で向に耳打ちし、肘で小突いた。
向が姿勢を正すと、髪で隠れて見えていなかった彼女の横顔が見えた。
眠りから目覚めたらしい向にホッとしつつ、上鳴が「よく眠れたよな…」と感心するような声を発した。
「以上!ご静聴ありがとうございました!」
歓声が沸くクラスに向かって、相澤が指示を出そうと下層にある一つのゾーンを指差した。
「そんじゃあまずは」
という、一瞬途切れた彼の言葉の続きは、場違いなまでに緊迫していた。
「ひとかたまりになって動くな!!!」
「「「………え?」」」
唐突すぎる教師の命令に、一瞬理解と反応が遅れる。
下層の広場を見下ろしていた相澤が振り返り、13号に指示を飛ばす。
「13号!!生徒を守れ!!」
広場に視線を向けた切島が、不思議そうな声を上げた。
「何だアリャ!?」
見下ろせば、そう遠くない位置に発生している黒いモヤの中から、何人もの大人たちが湧き出してきている。
その大人たちの異様な風体に少し気後れしながら、切島が言葉を続けた。
「また入試ん時みたいな、もう始まってんぞパターン?」
「動くな、あれは」
「敵だ!!!!」
相澤の言葉を聞き、生徒たちの心臓が跳ねる。
奇しくも
命を救える訓練時間に、目の前に現れたヴィラン
プロが何と戦っているのか
何と向き合っているのか
それは
途方もない、悪意