第91章 風向きが変わったら
彼女がそう考えたのをまるで見透かしたかのように。
伸ばした彼女の指先を死柄木が4本の指だけで掴み、無理やり爆豪の肩から彼女を引っ張り落とそうとした。
爆豪が爆風で舵を取っていた左腕で、肩からずり落ちた向の身体を脇に抱え込もうとする。
しかし、片翼を失った彼らはバランスを崩し、ガクッと大きく高度を下げ、勢いを失った。
返せ、と死柄木が怒鳴り。
連れていかれそうになった向の左手首を、爆豪が掴んだ。
(ーーーざけんなよ、おいコラ)
意識はあるのに、彼女は反射を使わない。
この、土壇場で。
彼女は未だに迷っている。
友達を、選んだことはあるか。
そんな問いかけを、どうしてテメェが俺やアホ面には聞かねぇのかなんて決まってる。
俺もあいつも、選ぶからだ。
問いかけたところで。
おまえの望む答えは返ってこない。
そのことをおまえは知ってるからだ。
それに比べて、デクや轟、切島あたりは選ばねぇ。
本当のとこは知らねぇが、俺やアホ面よりそれっぽく見える。
だから聞くんだ、おまえは。
友達を選んだことはあるかって。
選んだことなさそうな連中に。
おまえ、要は。
選びたくねぇんだろ。
選ばなくていい方法をずっと探してたんだろ。
何を寝れなくなるほど考えてんのかと思いきや。
そんなことかよ、馬鹿馬鹿しい。
「……っざけんなよクソが……」
甘ったれたことぬかしてんじゃねェ。
選ばなくていいなんて、んなわけあるか。
こっちはテメェに選ばれたくて堪らねェってのに。
優劣決めろ。
ヴィランに夢見てんじゃねェ。
迷うような選択肢でもねェだろが。
いくら俺を
選んだことがないおまえでも
こんな時ぐらい
「俺を、選べ!!!!!」