第91章 風向きが変わったら
人は生まれながらに平等じゃない。
これは齢4歳にして、この世界の誰もが知る社会の現実。
わかっていてもやりきれない。
どうして私が?
なんで私だけ?
わかっていても考えてしまうよ。
わかっていても羨んでしまうよ。
みんなは幸せそうでいいなとか。
どうしてこんなに不平等なのかなとか。
綺麗事だけを並べた言葉は、この世の中には腐る程転がっている。
みんな頑張っているんだよ、とか。
自分だけが辛いと思うなよ、とか。
悲劇のヒロインぶるなよ、だとか。
苦労は買ってでもしろだとか。
ふざけんなって話だよ、そんなこと言える奴はほんの一握りの幸せな人間だけなんだって。
もしも、許されるのなら
どうして私がこんな目に遭わなきゃいけないのかと、怒鳴り散らしてしまいたい。
なんで私だけがこんな人生なのかと、叫びたい。
だって、みんな。
私と違って幸せそうに見える。
こんなに世界が不平等な理由がわからない。
みんな頑張ってるって、みんなのことなんか知るか。
私より頑張ってない奴だって絶対いる。
自分だけ辛いと思って何が悪い、辛いものは辛いんだよ。
たまには私だって悲劇のヒロインぶって泣き喚きたい。
苦労なんて買ってまでするもんじゃない。
そんな事を心の底では思っていても
私は、踏み留まってしまうんだ
綺麗事なんて大嫌いだと思っていても。
飛行機を墜落させたいと思っても。
したくとも、出来なかった。
本当はそんなこと思うことすらしちゃいけないんだろうけど。
私はそんな出来た人間じゃない。
私はまだまだ子どもで、未熟で、浅はかで。
どうしようもなく心根が腐っている。
私は、全然。
優しい人間なんかじゃないけど。
ずっと、ずっと。
そんな自分と戦ってきた。
まだ、頑張れる。
もう少し、頑張れる。
こっちへ来いよと弔が私を誘う度。
いつも、いつも。
あの空港での自分を思い出した。
飛行機が爆発し、燃え盛っていたあの光景を思い出しては。
恐怖に震えた胸の片隅で、微かに
一線を越えられなくて、良かったと
確かに感じていた自分を思い起こした。