第90章 友さえ罵れ
「あの日、僕は何もしちゃいない」
男はそう言った。
『嘘だ』
私は、否定した。
「君の個性の暴発が招いた事故だった」
男はなおも言葉を続けて。
『そんなわけない』
私は呆然と呟き。
「だから警察は君の母親も君も信じなかった」
『そんなわけない…!』
「そういうことだよ」
「そういうことなんだよ。全部、君が壊したんじゃないか。逆恨みはやめてくれ」
(………私は)
久しぶりに楽しかった旅行の帰り。
飛行機に乗る直前。
母『そんなわけない』て来なかった。
「今飛び立った飛行機が、今日、君の国に帰る最終便だよ」
窓から見える、その飛行機を呆『違う、違う…!』
空港に置き去りにされたあの日。
私が眺めていた窓の向こう。
飛行機が、滑走路を走『おまえが!!』いった。
その翼の陰から、着陸しつつある飛行機が見えて。
私は腹いせ『違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う』と決めた。
「簡単な話だ。君は元々、そっち側にいるべき人間じゃない。一度だけじゃないんだよ、君の個性が暴発を起こしたのは。あの空港に、君はいた。君は自分に都合の悪いことは全て無かったことにしてしまうから、その時何があったのかも「正しく」覚えてないだろうけどね」
あぁ、やめてよ
「弔には、君を勧誘してもらいに行っていたんだ。けれど君は自責の念に堪えきれず、僕と弔を悪者だと思い込もうとした。君が置き去りにされた時、親類が君の母親を探せと警察に強く言えなかったのも、警察があの最低最悪な事件を起こしたヴィランを血眼になって探していたからさ」
もう、うんざりだ
もうやめて
『……私……私は』
私は腹いせに、その飛行機を墜落させてやろうと決めて
決めて
どう、したんだっけ