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風向きが変わったら【ヒロアカ】

第90章 友さえ罵れ




直線上に飛び出した彼女へと、男は片手の掌を向けた。
ドッと圧縮させた空気を押し出して。
高速移動した彼女を、周りの空気ごと一蹴した。
向はまともに腹部へと衝撃波を受け、身体をくの字にへし曲げられた。








ベキ、と。









向のあばらが折れる音がした。










『…ッ…!』


ほんの数秒の出来事。
向は衝撃波の圧力に弾かれ、宙へと投げ飛ばされる。
即座に自身の身体にかかっている力のベクトルを反転させ、ガッと身体を押し留めたが、男とはもうだいぶ距離が離れてしまっていた。
ごぼ、と口から溢れ出る鮮血に咳き込みながら、向が土埃を立てて爆豪の隣へと降り立った。


「ヒーロー活動許可仮免許証…持っているそうじゃないか。弔からいつも君の話を聞いていたんだよ。10歳で仮とはいえ資格取得者を選出するとは…ヒーローの本場…某国は、本当に節操がないなあ」
『………。』
「…………は?」


男の言葉に素っ頓狂な声を返したのは、脇腹を押さえて荒く息を吐いている向ではなく。
いよいよもって情報処理が追いつかなくなってきている爆豪だ。


「…おや、爆豪くんは知らないのかな。おかしいな、彼女と「二番目」に親しい友達だと聞いていたんだが」


あぁ、そうか、と。
男はそこで言葉を切り、心底嬉しそうに声をあげた。


「失念していたよ。「一番」の弔さえ…君はすげなく蔑ろにするような人間だったね。自分の汚点と思っている部分を、そんな他人に晒すわけはないか」
「おいどこの誰だか知んねーけどよ、その嬢ちゃんが仮免許持ちってどういうこった!教えてくれよ!」


バッチリ理解できてるけどな!と見栄を張るトゥワイスを眺めて、男は「国の違いというやつさ」と短く言葉を返す。
「よく分かったぜ!もっと分かりやすく言えよ!」とどっちとも取れる発言をした仲間の一人から視線を外し、男は脇腹を押さえて脂汗を浮かべている向を眺めた。


「君に聞いてみたかったんだよ。どうして、資格を取ろうと思ったんだい?確かに米国の仮免許取得年齢制限は10歳になってから、と日本に比べれば大分ハードルが低い。けれど、君の場合免許を取ったその先が心配だ。君の話なんか、向こうのプロヒーロー達は門前払いだっただろう」
『黙れ』

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