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風向きが変わったら【ヒロアカ】

第90章 友さえ罵れ










「おまえが!!!嫌いだ!!!!」








掠れ切った怒声を死柄木が発した。
その声と同時に、彼の両脇の空中から黒い液体が噴き出し、その噴出口から脳無が二体現れる。
オールマイトが強く向と爆豪の肩を掴み、後ろへと引き下げようと力を込めた。
しかしその抵抗も虚しく、ヴィラン達の口と、爆豪、向の口から脳無が現れた地点に噴き出したものと同じ液体が溢れ出した。


「っ!?爆豪少年、向少…!」
「…っだこれ、体が…飲まっれ!」
『……ッ!?』


二人は口から液体を溢れさせていく。
オールマイトが二人を助けようと引き寄せ、抱え込もうとしたが、一足早く。
バシャ、という水音を立てて、黒い液体は地面に落下し、ぶちまけられた。
液体に飲み込まれて、覆い隠されていたはずの爆豪と向。
しかしオールマイトが瞬きした一瞬で、二人は水中から忽然と姿を消していた。


「Noooooo!!!」



オールマイトが叫ぶのを待っていたかのように、次々と脳無達が「転送」されてくる。
奇声を発しながらヒーロー達に襲いかかっていく脳無達を呆然と眺めて、死柄木が呟いた。








「…………先………生」























































「また失敗したね、弔」


黒い液体から解放された時。
忘れもしない、あの男の声を聞いた。
街中の一角とは思えないほどに荒れ果てた廃墟の中、一人立っている男の姿は、「異様」という一言で表現するに値する。


「でも、決してめげてはいけないよ。またやり直せばいい」


まるで男は自分が「先生」であるかのように、地面に這いつくばって俯く弔を励まし、彼に手を差し伸べた。
そして、歪なヘルメットの下から私をじっと眺めて。
声を発した。






「…何年振りかな、君のことは覚えているよ」








あぁ、ようやく







「確か君のお父さんはーーー」








私はそう思って









「優秀なパイロットで」










地面を、強く




















「ーーー立派な、ヴィランだった」





















強く、強く強く強く強く蹴り出した。



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