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風向きが変わったら【ヒロアカ】

第89章 身から出た錆





あの男が生きていることを知って。
手元には、あの男に従っている弔と連絡をつけられるデバイスが残っていた。
手がかりが、ありすぎて。
復讐を諦めるなんて選択肢を、私は思い浮かべることすらしなかった。










どんな惨たらしい死に様を与えてやろうか












身体中の血液を逆流させてやろうか













球体状になるほど、身体を折りたたんでやってもいい












いやいや、触れる前に殺される













もっと、力が必要だ













あの男を殺すことだけ考えて、日々を過ごした。
自分の個性を使って殺すにしても、もはや数年のブランクがある。
戦うための技術は、常に吸収しておきたい。


『揺にぃ、傑物学園高校って難しい?』
「ん?あぁ、進路を決める時期か…そうだなぁ、深晴の成績なら筆記は問題ないと思うよ。古文は…まぁ、英語でカバーだ!嬉しいな、妹と同じ高校かー。何か出来ることがあれば言ってくれ」
『…日本で一番はどの高校なの?』
「え?一番か…東の雄英、西の士傑とは言われてるけど、一番は雄英かな…でも、ほら。雄英は遠いからなぁ…上を目指したいなら士傑が妥当かなあ」
『…士傑』


関西の家に引き取られて。
私はそれなりの扱いをしてもらえるようになっていた。
一つ歳上の男子中学生は居たけど、彼はまるで本当の妹のように私を可愛がってくれていた。
上手く身をこなして、新しい家での生活を始めて。
私と弔は、未だに。
スマホの画面を通じて声を聞いたり、メッセージをやり取りして、互いの存在を引き留め続けていた。











「相澤消太だ、よろしくね」












士傑を志望校に、と考えてはいたけれど。
その前にあの家での生活が成り立たなくなった。
彼と出会ってから、私は志望校を雄英高校に変えた。
依然として。
私と弔は変わらずに、友達のままだった。
私は何の気なしに消太にぃの話をした。
とても強くて、かっこいいヒーローに出会ったと、唯一の友達に聞いて欲しかった。
初めて恋をしたんだと、弔に話した。
すると、彼はたった一言。









「…………ふーん…」







そう言って。
USJで再会を果たすまで、一切電話もメッセージも寄越してこなくなった。

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