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風向きが変わったら【ヒロアカ】

第89章 身から出た錆




「…自業自得だろ」


今までずっと黙っていた彼がようやく口を開いた。
私は彼に顔を向けて、言葉を切った。


『…あぁうん。自業自得』
「…人の親をヴィラン呼ばわりするクソガキどもが悪い」
『……え?』
「…おまえ、自分が悪いと思ってるのか?…なら、やっぱおまえはヒーロー気取りだな…勧誘しようと思ったのに…ヴィラン向きじゃない」
『…何にしたって、手をあげるのは良くない』
「バカか、お父さんをぞんざいに扱うような奴は、殺して当然なんだよ」
『……でも』

















「おまえは、悪くない」



















『ーーー。』


その時、強く風が吹いた。
彼の長い前髪が揺れて、その下から彼の窪んだ目元が見えた。
まるで、泣き枯らしたかのような彼の乾き切った目元を眺めて。
私は息を飲んだ。
今までも目を合わせていたはずなのに、なぜか。
初めて私達は視線を交わした気がした。


『………そう思う?』
「ごちゃごちゃ考えすぎなんだよ、殺して当然だろ、半殺しで良かったと思えって話だ。警察の捜査結果が気に入らないなら、そいつらも片っ端からぶっ殺してやればよかったんだ」
『………それは、捜査結果に信憑性が増しちゃうんじゃないかな』
「知るか、おまえの「個性」だ、人殺そうが何しようが勝手だろ」
『……別に、人を殺したくはないよ。それに…今の話、おそらくキミの先生が全部仕組んだことだからね。キミは今先生に憤ってるの?』
「……………………違う、今はアメリカンチャイルドの話をしてるんだ」
『アメリカンチャイルドって』


急に熱弁を始めた彼を眺めて。
私は。












『…あははは』
「何笑ってる…怒るとこだろ」
『いや…なんか…キミの先生と遭遇したことは、絶対に「良かった」なんて思えないけど』















『キミに…出会えて良かった』























あの事件が起きてから、しばらく経って。
母は愚かな私に一切の関心を向けなくなった。
まるで私が見えていないかのように、責めない代わりに何かを与えることもなくなった。
二人だけの訓練の時間は終わりを迎え、私に自身の夢を重ねて見ることすらしなくなった母は、私が不要だと思ったのだろう。
この国に私を置いて、姿を消した。

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