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風向きが変わったら【ヒロアカ】

第87章 「友達だろ」




ピザでも頼もう、と爆豪を見つめてにこやかに提案する向とは対照的に、爆豪は目を見開いたまま向をガン見し続ける。
彼女は教室の隣の席から話しかけてくる時となんら変わらない声のトーンで、爆豪にまた声をかけてきた。


『…怪我は?』
「くだらねぇこと聞いてんじゃねぇ、とっとと聞かれたことに答えろや。なんでテメェはここにいんだよ?」
『……弔、スカウトに手枷も良くないよ』
「……ピザの次は手枷を外せって?…おいおい……おいおいおいおい……重役出勤しといて偉そうじゃないか」
『間違ったことは言ってない。仲間になりたいのなら、対等に扱うのが筋だよ』
「筋…?おまえを助けてやった俺に散々筋を通そうとしなかったおまえが…?筋だのなんだの説教か…?」
『元はといえばキミらが蒔いた種だろうに。私がいなくなった方がいいなら今すぐいなくなるけど』
「…………。」


トガちゃん、どのピザがいい?
と向はカウンターに上半身だけ突っ伏していたトガを親しげに呼び、スマホに表示された宅配ピザ屋のメニューを見せた。
彼女は飛び起きて両手をブンブンと胸の前で振りながら、ピーマンが乗ってないやつがいいです!!とメニューを絞り込めるわけがない言葉を返した。


『じゃあ、適当に頼むね』


と彼女がスマホを耳に当て、いくつかのピザを注文する間。
死柄木は首を引っ掻きながら熟考し続け、彼女がスマホをまたしまい込むのと同時刻。
ようやく結論に達した。


「…外したきゃ外せ」
「は?暴れるぞこいつ」
「いいんだよ、対等に扱わなきゃな…スカウトだもの。それに…この状況で暴れて勝てるかどうか、わからないような男じゃないだろ?雄英生」
『鍵は誰が持ってるの?』
「俺だよ」


向は荼毘の近くへと歩いて行き、片手を差し出した。
ぽん、とお手をするように自身の手を乗っけた荼毘を見て「茶番はいい…さっさとしろ…!」と上機嫌だった死柄木がイラついた声を発した。


「強引な手段だったのは謝るよ…けどな。我々は悪事と呼ばれる行為にいそしむただの暴徒じゃねえのをわかってくれ」


向が爆豪の座る椅子の前にしゃがみ、手枷に鍵を差し込んだ。
笑みを消した彼女の眼差しに、爆豪はジッと無言で視線を返す。

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