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風向きが変わったら【ヒロアカ】

第87章 「友達だろ」




ーーー事件発生まであと5分


「……今、なんつった?」


彼女の言葉を聞き、一切敵連合の勧誘に興味をそそられていなかった爆豪が初めて質問を投げかけてきた。
ヘッドハンティングしてきた期待の人材がようやく視線を向けてくれたことに、敵連合の面々はワッと盛り上がる。


「おいコラ深晴、答えろや。テメェに聞いてんだ、なんでつらっとした顔でここにいる?なんで平然としてやがる。答え方によっちゃ…」
『ブッ殺す?』


向はいつも通りの微笑みを爆豪に向け、『ははは』と乾いた笑いを浮かべた。
挑発してくるような彼女の物言いに爆豪がイラッとした顔をしてみせたのを見て、Mr.コンプレスが「おやおや!」と嬉しそうな声をあげた。


「やっぱり向がいると少し反応が違うね?ひとまず彼女との合流を決めたのは正解だったな、死柄木」
「…だいぶ時間とられたけどな…おまえを待つ間、何回ゴーカート横転させたと思ってる」
『彼らが乗ってるの一応ちゃんとしたレース用じゃないの?じゃなきゃ赤や緑のカメの甲羅なんて搭載できないって』
「向さん、トガも!トガも深晴って呼ぶね!?いいよね、仲間だもんね!!」
『あぁうんどうぞご自由に』
「………仲間だァ……?」


「テレビで見るより可愛い」、とジェラシーを滲ませ呟いたマグ姉の隣で、「だろ?」と荼毘が自慢げに声を発し、トガがガクガクと激しく頷いて同意した。
「彼女面かよ!」と突っ込むトゥワイスと、「フン、贋物の女に用はない!」と嫌悪感を前面に押し出すスピナー。
それぞれ好き勝手なことを喋っている敵連合の連中から進み出て、Mr.コンプレスが死柄木へと進言した。


「死柄木、彼女の晴れ舞台だ。俺達に正式に紹介してくれ」
「コイツを懐柔できた後で、まとめてな」


そう高揚した声で言葉を返した死柄木が、Mr.コンプレスから爆豪へと再び視線を戻した。


(……?)


ふと。
カウンターに背を向けたまま座る死柄木の左隣の座席。
そこに腰掛けている彼女のこめかみに汗が滴っているのを見て、死柄木が片手を伸ばし、拭おうとした手を直前で止めた。


「…おい」
『…ん?』
「…熱か」
『だいぶ暑い。それより弔、勝己に何か食べさせてあげたの?スカウトとか言っておいて、この扱いはあまりにひどい』

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