第87章 「友達だろ」
「……なんで、何も言ってくんねぇの…!?」
大丈夫だから。
俺はその理由知ってるから、なんて。
適当なことを言って、青山に皆には黙っていてもらうように頼んだ。
本当は何も知らない。
でもおまえが言わないでおいたことなら、きっと。
何か理由があるはずなんだ。
「俺おまえに言ったじゃん、USJのあと!皆がおまえを見る目変えた時、「同じクラスメートすら敵視してたら疲れる」って…俺そーゆうのマジムリって、マジ疲れるって言ってたじゃん…!」
いくらヒーローになりたいからって。
おまえと戦いたくなんてない。
おまえの敵になんてなりたくない。
「なぁ…ッ何とか言えよ…!!」
たった一言。
言ってくれるだけでいい。
違うなら、違うって言ってくれ。
間違ってるよって教えてくれ。
俺は、頭が悪いから。
こんだけたくさん考えても、おまえがヴィランだなんて間違った答えしか導き出せない。
だから、言って欲しい。
バカだなって、アホだなって。
俺のこと馬鹿にしてもいいからさ。
「こんな形で…さよならなんてしたくない…!」
おまえともっと、一緒にいたい。
それすら、俺の片想いなんて。
そんなのって、寂しすぎる。
今まで、ずっと
これからもずっと
なぁ深晴、俺たちさ
「…………友達だろ…」
そう言葉にした瞬間。
今まで電撃を反射せずにいた向が、上鳴に向けて全ての電力を跳ね返し、彼にぶち当てた。
ブツッと電源コードが切れるような音が上鳴の頭に響き、思考がブレて、途切れた。
狭まっていく視野の中。
上鳴は、俯いたままの彼女に震える指先を向けた。
膝から崩れ落ちる直前。
駆け寄ってきた向が上鳴のその手を掴み、彼を抱き止めた。
行くな、と。
小さく彼が声を振り絞った。
向は俯いたまま、彼を強く抱きしめた。
上鳴は身体を起こそうと足先に力を込めて。
起き上がることは叶わずに。
そのままゆっくりと
意識を手放した