第87章 「友達だろ」
林間合宿の襲撃事件最中、火事と毒ガスの壁に阻まれた敵連合の回収地点。
「…あぁ…おまえは本当に綺麗だなあ」
可愛いなあ、向深晴。
荼毘は背後から現れた向にはっきりとそう言葉にしたあと、「こっちへおいで」というように片手を彼女に差し伸べた。
トゥワイスは一向に冷たい表情を崩さない向と、荼毘を交互にみやり、バッバッと激しく左右に動かしていた頭を傾けて、問いかけた。
「…知り合い?」
「『いや?全然』」
「ウッソだろ荼毘それらしい雰囲気出しといて!?」
「テレビで見るより可愛いな…」
「そういう意味!?ミーハーかよ!!完全に友達感出てただろ!!」
「初対面も良いとこだ…でも本当に可愛い、これからずっと仕事場でも一緒か…たまんねぇなオイ、ほっぺ柔らかそう。体育祭からファンなんだよ俺」
「ほっぺって!ほっぺっておまえ!ヴィランが「ほっぺ」って!ほっ「うるせえな。静かにしろ、居場所がバレるだろ」
「そもそもヴィランがヒーロー志望のファンになって良いと思ってんのか!?いい訳ないね!!」
「こいつはもうヒーロー志望じゃねえだろ」
サインください!!とシャウトしたトゥワイスの後頭部を荼毘がベシッと叩き、真っ当な理由で叱責するかと思いきや、彼も続けて言葉を発した。
「俺が先だ」
『話して良い?』
「「どうぞ」」
『弔と話したい。どこにいるの?』
「今日は来てない。まぁそう急くな、この作戦が終われば会えるだろ」
『…なら、この作戦のリーダーは誰?』
「俺だよ。ここにいりゃじき爆豪が来てお迎えも来る…談笑でもして待ってろ」
『は?勝己?』
向はそこで言葉を止めて。
草陰に隠れていた青山と目が合って、ハッとした。
口を両手で押さえて、可哀想なくらい体を震わせているクラスメートの姿を目にした後。
向は引きつった笑みを浮かべ、すぐに荼毘の方へと視線を戻した。
『…なら、行けないや』
「「………は?」」
『今は行けない、だから帰って』
「……何言ってんだ?」
『勝己は連れて行かない、話が違う』
「…そりゃないだろ?おまえを連れていくことも俺たちの計画の一つだ。死柄木が待ってる。…まさか日和ったのか?」