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風向きが変わったら【ヒロアカ】

第87章 「友達だろ」




BZZZZ!!!と帯電した電気をぶつけてくる上鳴の攻撃。
向は皮膚の表面上に限定してベクトル変換し、身体に受けた電力をそのまま背後に向けて受け流し続ける。
一瞬、一瞬。
彼の激情が電流として向にぶつかってくるたび、稲妻が瞬いて周囲が照らされる。


(……すごく、痛い)


火傷を負った背中でも。
地面に打ち付けた額でもない。
胸の奥がひどく痛む。
彼の電撃が届くことなどあり得ないのに、彼の身に帯びた雷が波動のように届くたび。
向の身体を避けて、過ぎ去っていくだけの雷光に、目の奥がチカチカと光って眩しくて。
目の表面が潤み、視界が歪む。


『…電気、もうやめようよ』
「……ッ……まだまだァ!!」


万雷の眩しさに堪えきれず、向が目を瞑った。
真っ暗な視界の中ですら、彼から流れてくる目も当てられないほどの稲光。


「……なぁ、なんで…?」


一向に否定も、肯定すらしてくれない向に。
上鳴が朦朧とし始めた自我を必死に保ち、問いかける。














ーーー彼女、ついて行く気だったみたい


合宿所に警察と消防が到着して、騒然としている最中。
何をしていいのかわからなくて呆然と突っ立っていたら、青山が未だに収まらない身体の震えを両腕で押さえ込みながら打ち明けてきた。


「ねぇ、君彼女と仲良いだろ。どういうこと?」
「……どういうことって、ついて行く気だったってなんでわかんの?」
「僕ね、敵の集合地点付近に隠れてたんだよね。あと少しで見つかりそうって時に彼女が来てさ、仲よさそうに戦いもせず敵と話し始めたんだ」



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