第86章 終わりと始まり
「私は轟さんを信頼しています…が!万が一を考え、私がストッパーとなれるよう…同行するつもりで参りました」
「八百万くん!?」
副学級委員長である八百万すら、同行すると言って聞かない。
彼らの言い分に愕然として、飯田はさらに眉間のシワを深くした。
「…僕も…自分でもわからないんだ…」
「……!」
「手が届くと言われて…いてもたってもいられなくなって…」
自分が怪我をするたびに。
自分が危ない目に遭うたびに。
自分を想ってくれる、大切な人の心を軋ませる。
大怪我をした彼女を見て、心が砕ける音を知った。
連れ去られた幼馴染を見て、言いようのない絶望感を味わった。
だから、見ないふりはもうできない。
知らないふりなんて、できやしない。
「……僕は…助けたいと思っちゃうんだ」
ーーー事件発生まであと2時間半
会見準備を終え、雄英へと向かう車の中。
彼から連絡が入った。
「…はい、どうしました」
<相澤くん、今少し話せるかい>
車のスピーカー音を上げ、どうぞ、と短く返事を返した。
電話口、押し黙ったオールマイトは少しの間をとって、彼に本題を伝えた。
「………………は?」
彼から聞かされた話が、あまりに突拍子がなさ過ぎて。
相澤は青信号になって前方の車が走り出しても、気づくことなくブレーキを踏んだままだった。
プップーーー
クラクションを鳴らされ、ようやく我に返った。
頭の中の情報をかき集め、まず胸に浮かんだのは。
言いようのない安堵感。
そしてすぐにその感情をかき消すかのように、ぶわっと湧き上がってきたのは恐怖心だ。
「……本気で言ってるんですか?」
<あぁ、ずっと黙っていてすまない。泳がせて、尻尾を掴む予定だった。今日でそれも最後だ。…けれどその前に、君に話しておくべきだと思ってね>
「……待ってください、そんなの。今話されたって俺にはどうしようもないでしょう」
<……いや、それは思い過ごしさ。まだ君にしか出来ないことがあるんだ。ーーーーーーー。>
オールマイトからの申告に。
相澤は目を見開き。
そして、はっきりと答えた。