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風向きが変わったら【ヒロアカ】

第9章 お忘れではございませんか




「おいコラ半分野郎、何勝手な事言っとんだてめェは!!」
「…勝手かどうかは向が決める事だろ。なんでお前が出てくるんだ」


(やけに敵対視されてんな…)


鬱陶しいほど絡みついてくる爆豪の荒々しい視線の原因に、思い当たることなんてなかった。
個性把握テストの時、明らかに具合が悪そうな向に手を貸すことなく放置していた爆豪を、「お前、それでもヒーロー科か」なんて目つきで見てしまったことくらいだ。


「…向、どうする?」
『えっ、一緒に寄り道して帰りたい』
「…寄り道?別に構わねぇが…」
「てめェも、調子よく答えてんじゃねぇよ!!」
『ねぇ、なんで勝己がそんなに怒るの?保護者か!』


(…いや、保護者ではねぇだろ)


そういうことに全く無頓着な俺でも分かる。
今の爆豪は、「保護者面」というより「彼氏面」というやつだ。
全く同じことを考えたのか、向の席の近くで話をしていた俺たちに、緑谷が「いや…どちらかというと彼氏面では…」と呟きかけてきた。


「あァ!?黙れクソナード死ねカスブッ殺すぞ!!」
「あっ、良かった…いつものかっちゃんだ」
「そういや、今日あんま爆豪と向が言い争ってんの見ねぇなー」


どした?と何の気なしに向に問いかける切島にさえ、爆豪はギラッとした虎のような目を向ける。


(……分かりやすいな)


初めは俺と爆豪が険悪なムードを作り出したのに、今や爆豪は俺のことなど眼中にもないのか、いつの間にか向と「仲良し」になっていた切島、なぜか最初から「仲良し」だった緑谷に突っかかっている。


「…向、どこ寄って帰りたい?」
「君たち、暇なの?そんなことやってる暇あったら家帰ってトレーニングでもしてろ」


突如、入り口に背を向けて話していた俺たちの背後から、相澤先生が現れた。
いつもは授業のチャイムが鳴ると同時に現れるはずなのに、今日は珍しく数分早い。
トレーニングなら飽きるほどやってる、と言い返してやりたくなるが、『げ』という言葉を漏らした向に気を取られ、相澤先生に言い返すタイミングを失ってしまった。





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