第83章 モか
「あれっ?まだこんだけですか」
「回収地点」で待っているはずの仲間たちの姿がない。
その現状を認識し、麗日・蛙吹を襲撃した女子高生ヴィランがそう言った。
「荼毘くんは?」
「心細い俺を置いて行きやがった!敵が来ても、俺と一緒ならもう安心だトガちゃん」
「とても不安ですねぇ、でもまぁいっか」
「不安!?ヴィランが何言ってんだ!?笑っちまうぜ!」
素直な感想を述べるトガに対し、異議申し立てしてきたトゥワイスは「こっちへおいで!」と確実にヒーロー達には見つかりっこない草陰に全力で隠れながら手招きをしてくる。
素直にトガがトゥワイスと一緒に草陰に隠れて待っていると、息を切らした荼毘が向を抱っこして走ってきた。
「お姫様抱っこ!!!荼毘くん私も私も!!すごく良い!!良いです!!」
「わっ、トガちゃん大声出すな!お姫様抱っこなんてやる奴の気がしれねえぜ!俺で良ければ、腕貸すよ」
「茶化すな。こっちは危うく鼻の骨持ってかれるとこだったんだ。イカレ野郎、血は採れたのか?何人分だ?」
「一人です!」
「一人ィ!?最低3人はって言われてなかった!?」
「仕方がないのです、殺されるかと思った」
「つーかよ、トガちゃんテンション高くねえか!?何か落ち込むことでもあったのか!?」
「お友だちができたのと、気になる男の子がいたのです」
「それ俺!?ごめんムリ!!俺も好きだよ」
草陰から飛び出してきたトガと、トゥワイス。
興奮したように駆け寄ってくるトガを警戒するように眺めていた荼毘は、どうあがいてもコントにしか聞こえない二人の会話に水を刺そうと口を開き。
「うるせえな、黙って…」
トガが向目掛けて吸血機の注射針部分を振りかぶってきたのを、ガッと手首を掴んで制止した。
「向さん!!やっぱりカァイイね、チウチウしたい!」
「すんな、こいつにこれ以上怪我させてみろ。おまえ塵と化すぞ」
「燃えカスですか?トガクズですか?」
「おがクズみたいに言うな、燃やしたくなるだろ」
「おい荼毘!どうでもいいことだがよ、脳無って奴呼ばなくていいのか?お前の声にのみ反応するとか言ってたろ!?とても大事なことだろ!」
「ああ、いけねえ」
トゥワイスの指摘に、荼毘が素直に頷き、なおもグイグイと吸血機の針を向けてくるトガの手首を捻りあげた。