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風向きが変わったら【ヒロアカ】

第9章 お忘れではございませんか




「あ、向さん。今日も一緒に食べない?…あ、かっちゃん達と食べるの?」
『うん、先に誘われたから行ってみる』
「す、すごいね…」
『そう?』


先約だから、なんて理由で、向は緑谷の誘いを断った。
ごめんね、と緑谷には言うくせに、俺には見向きもしないまま、向は教室から出て行った。


(…あぁ、なんだ単純な話じゃねぇか)


向がわざわざ嫌味な態度を取るとは思えない。
だとすると、残された可能性はただ一つ。


(……綺麗さっぱり忘れてやがる)


昨日のヒーロー基礎学が始まる直前。
更衣室前に立つ向に、声をかけた。


ーーーなぁ、明日の昼空いてるか
ーーー昼?空いてるよ
ーーーなら空けといてくれ


中身の濃かった昨日の授業で、俺とそんな話をしたことすら覚えていなくても仕方ない。
全て忘れているとすれば、向が爆豪の誘いに乗った理由もわかる。


(…俺だけか)


なんとなく。
ほんの少しだけ。
楽しみにしていたのに。


「………腹、減ったな」
「あれ、轟。昨日向に用事あるって話してなかったか?いいのかよ、用事より先に飯食いに行かせて」
「……用事?」


(…誰だ、こいつ。あぁ、やたら反復横跳びが早くて…向の太ももがどうとか言ってた…)


「…変態野郎」
「おい、せっかく教えてやったのになんだよその口ぶりは!?紳士のオイラに失礼だろ!!」


地団駄を踏む峰田を見下ろしながら、質問を返すことにした。


「誰が紳士だって?それより、用事ってなんのことだ」
「え?用事があるのは轟だろ。昨日話してるの聞いてた」
「俺は用事なんかねぇよ」
「は?でも昨日、昼休み空けとけって向に言ってたろ」
「……あぁ」


どうやら、俺の言い方がまずかったらしい。
思い返してみれば、そう解釈されてもなんら不思議じゃない。


(…昼飯誘ったつもりだったんだが)


重い腰を上げ、食堂まで一本で繋がっている廊下に足を踏み出した。
今から向を誘ったら、きっとあいつと一緒に食べる予定の4人が付属してくる。
やたらと敵意を剥き出してくる爆豪と相席は避けたいが、楽しみにしていた分、諦めがつきづらい。
俺はそのまま食堂へと辿りつき、向の姿を探すことにした。
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