• テキストサイズ

風向きが変わったら【ヒロアカ】

第82章 リ者




冷静になれ、と爆豪に怒鳴っておいて、轟も内心冷静ではいられない。
自嘲気味に冷や汗を浮かべながら笑っている轟に、「笑ってんな殺すぞ!!」と唯一の味方からも殺害予告がぶつけられた。
何本もの投げ槍を投げ込んでくるかのように、素早く、鋭い歯先をぶつけ続けてくる敵に、轟が更に氷壁を創造し応戦する。


「近付けねえ!!クソ、最大火力でブッ飛ばすしか…」
「ダメだ!!」
「木ィ燃えてもソッコー氷で覆え!!!」
「爆発はこっちの視界も塞がれる!仕留め切れなかったらどうなる!?」


八方塞がりの状況で。


(クソ、はよブッ殺さねえと…!!!)
(早く助けに行かねえと…!!!)


二人の想いは、ただただ急くばかり。
そんな時だった。
防戦一方だった二人の耳に、聞き慣れた声が届いた。


「いた!氷が見える、交戦中だ!!」
「「!?」」


破壊音と共に森から飛び出して来たのは、ボロボロの緑谷を背負った障子と。


「爆豪!轟!どちらか頼む、光を!!!」


駆け抜けて来た彼の背後を、木々を災厄のように薙ぎ倒し追い続けてきたダークシャドウ。
肉、と呟いた敵はハエでも潰すかのようにダークシャドウの片手で叩き潰され、呆然とする爆豪と轟の目の前で倒れ込んだ。


「かっちゃん!」
「障子、緑谷…と常闇!?」
「早く光を!常闇が暴走した!!」


炎を出そうとする轟を爆豪が片手で制止し、見開いていた目をダークシャドウに向けたまま、彼はニッと笑った。


「…見てえ」








ーーー強請ルナ、三下









低く放たれたダークシャドウの言葉と同時に、あれだけ跳び回っていた敵は軽々と黒い影に捕らえられた。
その背を一本の木に叩きつけられるだけでは飽き足らず。
ダークシャドウは敵を片手に持ったまま、その手でガガガガガと木々を次々と薙ぎ倒し、度重なる木との衝突で身体の隅々まで、歯先すら粉々になった男の身体を最後には投げ捨てた。


「ァアアアア暴れ足リンゾォアアアア」


踵を返し、今度は緑谷たちの方へと危害を加えようとしてくるダークシャドウの宿主、常闇の元へ爆豪と轟が駆け寄り、爆破と炎でフラッシュを浴びせる。
ひゃんっと小さく鳴いたダークシャドウを見て、障子が(可愛い)と率直な感想を抱いた直後、常闇がようやく自身の身体の自由を取り戻した。

/ 768ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp