第82章 リ者
ーーー緑谷、障子、常闇の遭遇直前
<敵の狙いの一つ判明!!生徒の「かっちゃん」!!向さん!!わかった!?二人とも!!二人はなるべく戦闘を避けて!!単独では動かないこと!!>
「不用意に突っ込むんじゃねぇ、聞こえてたか!?おまえ狙われてるってよ」
「かっちゃかっちゃうるっせんだよ頭ン中でえ…クソデクが何かしたなオイ、戦えっつったり戦うなっつったりよお!?」
ゴール地点へと向かう方角。
歯を刃のように変幻自在に伸縮し、硬化させる個性の敵が爆豪・轟の前に立ち塞がっていた。
「俺は、クッソどうでもいィんだよ!!」
(ンなとこで足止め食らってる場合じゃねぇ…!今のテレパスに深晴の名前が挙がってた、尚且つあいつとペア組んでたはずのデクからの伝言だとすんなら…!!)
爆豪は敵を爆破しようと左腕を振りかぶり、真横から飛び出してきた敵の「歯」を大きく仰け反って回避した。
「冷静になれ!緑谷と一緒じゃなくたってあいつはクラスん中じゃトップレベルで強え!」
「んなこたわかってんだよ、俺ァ至極冷静だわ!!指図してんじゃねェ!!」
「冷静じゃねぇから言ってんだ!」
倒れていたB組生徒をおぶりながら、轟が身動きの取りづらい状況で氷壁を生み出し、敵を捕らえようと氷結攻撃を繰り出す。
敵はうまく個性を使って木々を飛び回り、一向に轟の冷気が届かない。
「地形と個性の使い方がうめえ」
「見るからにザコのひょろガリのくせしやがって、んのヤロウ…!」
((相当場数、踏んでやがる…!!))
轟がもと来た道を振り返り、眉間にしわを寄せた。
「ここで、でけえ火使って燃え移りでもすりゃ火に囲まれて全員死ぬぞ。わかってんな?」
「喋んな、わーっとるわ」
(…退こうにも、ガス溜まり…こりゃわかりやすく「縛り」掛けられてんな)
マンダレイの伝令の意味。
それは、マンダレイに得た情報を伝えたのは緑谷だということ。
そして緑谷とペアを組んでいたはずの向がテレパスでわざわざ「二人とも」、とマンダレイから視認できない爆豪とまとめて挙げられていたということは、彼女はその「伝令」が行われた場所にはいなかったということだ。
(…深晴、どこにいる…!)