第80章 親不孝者のオリジン
「後でな!な!?後で殺してやっから!!」
「ーーーーーッ…」
オールマイトへの憧れも。
憧れ故に諦められなかった夢も。
夢を応援してくれる、大切な母親も。
母親と同じくらい、かけがえのない友情も。
そのどれにも優劣をつけるべきではないと教えてくれた彼女への愛情も。
どうでもいいわけがない。
それら全てが、緑谷出久を形作っている。
しかし、粉々になった彼の身体を再び立ち上がらせることができた力の原点はそのどれでもない。
ただそこに
助けを求める人がいる
変えようのないその現実が、光を失いつつあった彼の瞳に、戦う意志を再び灯した
「っころ…させてええええええ」
ワン・フォー・オール
1000000%!!!
「たまるかああああ!!!」
マスキュラーの膨れ上がった片腕の下敷きになっていた緑谷が身体を叩き起こし、防御しようとした彼の筋繊維を全て無為にする。
全身全霊の一撃はマスキュラーの頬に直撃し、彼はその肥大した身体ごと吹き飛ばされ、崖に叩きつけられた。
ーーーヒーローになりたいなんて、イカレてる。
ずっとそう思い込んで、考えを変えようとしなかった洸汰の眼前。
身を挺してまで命を救ってくれた一人の救世主が、そこに立っていた。
「…何も知らないくせに…!何で!!何も…!知らないくせに…」
何で、そこまで。
そう呟いた洸汰の頭の中に、いつかマンダレイが彼を諭してきた時の言葉が思い浮かんだ。
ーーーあんたもいつか、きっと出会う時がくる。そしたらわかる。
命を賭して
あんたを救う
あんたにとってのーー
(ーー…僕の、ヒーロー…!)