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風向きが変わったら【ヒロアカ】

第80章 親不孝者のオリジン




『出久、怪我しすぎだよ』


体育祭の最中。
ガタガタと震えながら毛布に包まって、観戦席を見下ろしていた彼女に開口一番、そう言われた。


「う、うん…リカバリーガールにも、こういう怪我はもう治癒しないって言われた」
『だろうね』
「早く、みんなみたいに個性を扱えるようにならないと…またUSJみたいなことがあったら、次は戦いたいから」


そう呟いた僕の言葉に、向さんは呆れ顔で言った。


『こらこら、自分の身体を大事にしなよ』
「え?あぁ、だってこれが僕の出来る最大限だから…」
『だってじゃないよ。出来てないから怪我してるんだよね。それは出来るって言わないよ』
「みんなと違って出来ないことばかりだから、少しくらい無理しないと…向さん、どうして君は僕なんかと違って優秀なのに、出来ることすらしようとしないの?」


普段の授業態度と、USJでの彼女を見ていればわかる。
プラズマなんて現象は、スーパーコンピュータでも使わないと人工的に発生させることなんて出来っこないのに、彼女はその「個性」で生み出してみせた。
そんなことが出来てしまうほどの演算能力と、個性のキャパ・技術を彼女は持っているのに。
騎馬戦の時も、轟くんに負けそうになった時でさえその力を発揮しようとはしなかった。


『僕なんかって、卑下しないでよ。気づいてたなら「反射」を使って騎手になってって私に言えばよかったのに』
「向さんが言わないだけで、麗日さんみたいに「NG」があるのかなと思ったから。15分、全てのベクトルを反射なんてキャパオーバーかとも思ってた。何より騎馬戦を勝った後は本戦だったし、向さんが言い出さない以上、僕から常闇くんと麗日さんもいる場所で提案するのはやめようと思ったんだ」
『優しいね、出久は。自分の怪我には無頓着なのに』


でもそれ、良くないよ。
彼女は視線をフィールド上から晒さずに、そう言った。


『もう少し、自分の痛みにも敏感になりなよ。出久の身体が傷つくたびに、出久だけが傷ついてると思ったら大間違い』


コスチューム、自作してくれるようなお母さんがいるならさ。
彼女はそう付け足して。
「ははは」と乾いた笑いを浮かべた。

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