第77章 破綻者のレッテル
「爆豪くん包丁使うのウマ!意外やわ…!」
「意外って何だコラ包丁に上手い下手なんざねえだろ!!」
よほど空腹なのか、ものすごい勢いで食材を切り刻んでいく爆豪を見て、通りすがった麗日がそんなコメントをした。
そんな彼女の声を聞き、女子の井戸端会議が解散したことを知った上鳴は「出た、久々に才能マン」と友人の包丁さばきに感想を述べた後、近くへとやってきた向に笑いかけた。
「深晴!皿運ぶの手伝って!」
『…いいよ』
「あれ?深晴何担当?いつからいたん?シャワー早くね?それって女子的にどうなん?」
『火起こしだけど…焦凍来たからもういっか。ていうか、女子的にどうなんってどういう意味だコラ』
「おまえ最近爆豪の口調に引っ張られてきたよな。気をつけて!?自然と最近「クソ」とか使ってない!?」
『ははは、そんなクソみたいなお下品な言葉を使うわけ……使ってるわ』
「向、アウトーーーー」
『デデーーーーン』
笑ってはいけない某テレビ番組のモノマネをしながら、上鳴と向が皿を施設からテーブルへと運ぶ為遠ざかって行く。
自分と同じだけ疲れているはずなのに笑みを絶やさない上鳴を見て、「皆元気すぎ…」と切島が呟いた。
「深晴、結局爆豪にすんの?」
廊下を二人で歩いていると。
上鳴が唐突に真に迫る質問をしてきた。
向はそんな彼を見上げ、逆質問を返した。
『…どうしてそう思うの』
「いろんな奴らに聞いて回ってるみたいじゃん。友達選んだことある?って。でもその聞き方じゃみんなわかんないんじゃね?恋人を選ぶ基準は?とか聞いてみろって」
『…それだと意味が変わってくるよ』
「そういう意味だろ」
『…そのままの意味』
向が入学初日に上鳴に見せたような、無表情に戻った。
そんな彼女の横顔を見て、上鳴は「ぁー…」と沈黙をかき消すように言葉を発し続け、ようやく話題を思いついた。
「肝試し!マジ楽しみだな」
『いや、怖いよ』
「え、意外。そういうの怖くないタイプだと思ってた」
なんで?
と笑って問いかけてくる上鳴に、向は視線を合わせず答えた。
『祟られたって、自業自得だから』