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風向きが変わったら【ヒロアカ】

第77章 破綻者のレッテル




いつものことながら、女子なのにそれでいいのかという好タイムで炊事場に現れた向。
特に泥まみれになる訓練ではなかった緑谷と、カラスの行水レベルでさっさと大浴場を後にした常闇と三人でひとまず火種を作ろうとする間、珍しく常闇が自分から話題を提示した。


「…お前たちは、暗闇は得意なのか」
「え?…暗闇得意な人っているのかな…僕はあんまり、得意じゃないかも」
『得意じゃないかも』
「…そうか」


薪を運んでくるや否や意味深なことを問いかけて来た常闇。
ジッと彼を緑谷と向が見つめていると、彼はその視線に気づき、言葉を続けた。


「…闇の狂宴」
「えっ!?なにその怖そうなパーティー!?」
『怖そうなパーティーって。肝試し楽しみなんだね』
「…楽しみというわけじゃない。ただ」


常闇はまた嘴を閉じて、黙ったあと。
だいぶ間をとって答えた。


「…待ち遠しい」
「えっ」


それは楽しみなんじゃないのかな、と緑谷がどう反応すべきか対応に困っていると、向は急に腰を上げ、どこかに歩き出した。


「あ、向さん火をつけるのならこっちに…」


緑谷が彼女を呼び止めようとして、口を閉じた。
向はまっすぐに施設の倉庫の方へと向かっていく。
ドアノブがついた倉庫の扉の前で、洸汰が段ボールを両手に抱えたまま、一人でどうにか開けられないかと試行錯誤しているのを見ていたらしい。
扉を開けてやった向と洸汰は視線を合わせて。
特に何の会話をすることもなく、彼女は火を起こしている緑谷と常闇のもとへと戻ってきた。


「…向さん、洸汰くんとよく一緒にいるよね」
『いや?洸汰がご飯食べてる時にいるだけだよ』
「どうして突っぱねられないの?何か、その…秘訣みたいなものってあるのかな」
『ははは、牛乳飲んでやればいいんじゃない?』
「牛乳?」


彼女の言葉を受けて、緑谷は目をパチクリとさせた。
言われてみれば。
緑谷が見かける限り、向はいつも洸汰から牛乳を貰っている。
飲んでやればいい、ということは。


「…洸汰くん、牛乳嫌いなの?」
『そうみたいだね。水の方がいいんじゃない?』

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