第77章 破綻者のレッテル
ーーーPM2:00
林間合宿の早くも前半最終日。
今日も今日とて叫びが響き渡る訓練場の一箇所で、赤点補習組は固まって、特別メニューをこなしていた。
寝不足が祟ってか、気の抜け始めた彼らを相澤が一喝し、焚きつける。
「補習組!動き止まってるぞ」
「オッス…!!」
相澤は捕縛武器を俯いていた切島の額に引っ掛けて、無理やりグイッと前を向かせた。
今日からさらに頑張る!と息巻いていた切島でさえエネルギー切れを起こしている中、昨日と大して心境に変化のない他4人はグタ…と彼よりさらに身体を重そうに傾けていた。
「すいません、ちょっと…眠くて…」
「昨日の補習が…」
「だから言ったろ、キツイって」
皆も、ダラダラやるな!
と全体に声をかけた相澤のすぐ横を、高笑いしながら飯田が駆け抜けて行く。
「ハーッハッハッハ!捕まえてみたまえ、向くん!」
飯田が高速で通り過ぎていった後、向がそれに近いスピードで彼を追いかけ、飛んでいく。
脚力と持久力を鍛える訓練を行っている飯田と、計算の早さとキャパを増やす訓練を行なっている向は、別にペアを組めと言われたわけでもないのに初日から二人で駆け回り、飛び回っている。
どうやら、お互い無言で走り続けて飛び回り続けることはしたくないらしい。
(まるで浜辺を駆け回る恋人同士の様じゃないか!)
実はそんなことを思っている飯田は満面の笑みを絶やさず、恋人と追いかけっこをしているにしては、機敏過ぎるほどに腿を上げ、腕を振り、後ろなど振り返る気のない全力疾走でまた相澤の視界から居なくなる。
(飯田この野郎……!!!)
正直、向とじゃれているようにしか見えない飯田を見て、峰田が頭皮から滴る鮮血に混じり、血涙を流した。
そんな騒々しい訓練時間が終わると、一旦生徒たちはシャワーを浴びることが許される。
私服に着替え、全員集まった班から炊事スタートとなっていたが、それでは合理性に欠けるという担任の一言で炊事の班分けは却下。
早く来た人から火起こし担当→少し遅く来た人は米とぎ担当→最後に来た人は下ごしらえ担当という順に役割を決めることとした。