第77章 破綻者のレッテル
なんの話だ、と食ってかかる爆豪のすぐ後ろ。
吐血した切島を見て、飯田が「大丈夫か切島くん!?おのれヴィランめ!!」と大真面目に周囲を警戒し始める。
違うよ飯田くん、と緑谷が訂正するのと同時、向が周りの喧騒に目を覚ました。
「あ、おはよう向さん。早起きだったんだね」
『…出久、おはよ』
向は身体を起こし、既に朝食が並んでいるカウンターに視線をやって、席を立った。
『お腹すいた』
(二人とも決定的瞬間を見られたのに一切動揺してない…!?なんで…!?)
一切照れるそぶりのない二人を見て、緑谷が「!?」というリアクションを取った。
向はその緑谷に『ははは、目玉飛び出てるよ』と笑い事ではない事実を伝えて、颯爽と朝食を待つ行列へと並びに行く。
「上鳴…俺を置いて先に行け…」
「バカヤロウ、だから言っただろ!リア充は危険だから近づくなってあれほど…!あれほど!」
「朝からうるせェバカ共」
「「バカはテメェだ!!!」」
寸劇すらさせてもらえない切島と上鳴が爆豪へと抗議する間。
既にキュルルルと切なげに訴えてくる自身の腹部をさすりながら、向はいつの間にやら隣に立っていた轟に、視線で圧力をかけられていた。
『なんで朝からそんな顔してるの』
「……こっちが聞きてぇ。なんで朝から」
『?…早かったから寝てた』
「肩抱かれたままか」
『手、頭に乗せられてただけだよ』
「なんで乗せる」
『知らないけど』
ちょうど良かったんじゃない?と答える彼女は、なぜか少しだけ苛立たしげだ。
そのトゲのある言い方に轟が閉口して数秒。
なんと言おうかと考えていると、向の方から言葉をかけてきた。
『ごめん、嫌な言い方したね』
「……別に。……どうした」
『……あんまり寝てない』
「……。」
俯いた彼女は深呼吸を二、三度繰り返し、轟に笑いかけた。
『ははは、ごめんね。朝苦手で』
「…プレッシャーか」
『え?』
「…俺も含めて、周りの奴ら」
『………。』
選ぶことが苦手な彼女。
もし、そのせいで眠れないほど悩ませてしまっているのだとしたら、自分はいい加減身の程を弁えなくてはいけない。
そう思って問いかけた轟に、彼女はキョトンとした後。
どうして?なんて疑問を返してきた。