第77章 破綻者のレッテル
「「「ん?」」」
上鳴の言葉に衝撃を受けた切島の声と被せて、もう一人。
あわあわとし始めた緑谷が不安そうな声をあげたのを聞き、切島、上鳴、飯田が歩みを止めずに彼の方を見た。
「聞かれたん?緑谷」
「聞…聞かれた……」
「ほら見ろ!緑谷が聞かれてんならぜってー「そんなことする人じゃなさそうだよね」って意味だって!」
「いや待て待て、そうなると俺の地位が危うい…なんで深晴聞いて来ないの!?俺選んでそうだからってこと!?」
「二人は同じようなことを聞かれたのか?友達を選んだことはあるか、と向くんがそう聞いたのか?」
「え…う、うん。林間合宿の間じゃないけど、少し前くらいかな」
「なぜだろう」
「はて」、と首を傾げる飯田につられ、緑谷が「ふむ」と首を傾げた。
食堂へとたどり着き、A組の生徒たちが集まっているテーブルと近づくと、そこにはちょっとした人集りが出来ていた。
「あれ、おはよう麗日さん。どうしたの?」
「あっ、デクくんおはよう!…あ…いや…ちょっと…たまらんくて」
「たまらんくて?」
なんだかにやけている女子たちの指差す方向。
テーブルにいつも向かい合って座っている爆豪と向が、珍しく隣り合って座ったまま、机に突っ伏して眠っていた。
なぜか爆豪の右手は向の右肩に置かれており、まるで彼が彼女の肩を抱いたまま眠っているかのように見えてしまう。
「二人ともめちゃくちゃ寝顔かわええ…」
「えっ、これどんな状況?」
「わからんけどかわええ…はぁあうち飯田くん応援してるけど爆豪くんも完全にツボ押さえてきとる…!」
方言ダダ漏れで打ち震えている麗日の後方から、「よっしゃ、今日からまた頑張る!!」と元気に死亡フラグを立てた切島がすやすやと眠る二人の方へと顔を向け、笑った顔のまま硬直した。
直後、ガハッと吐血して倒れた切島を上鳴が抱きかかえ、「切島ぁああ!!」とノリ良く叫んだ。
その叫びにハッとして爆豪が目を覚まし、視界に映る彼女の寝顔をぼんやりと眺めた。
(…寝てた)
二度寝はしないと決めているのに、珍しいこともあるもんだと考え、大きくあくびをしながら身体を起こしたところで、ようやくニヤついた女子たちの視線に気がついた。
「…んだコラ、見てんじゃねぇよ」
「いや、だって…見せつけにきてるから」