第76章 役に立つから
「うっ、うるせぇ!こっち来んな!」
「あ?女だけはべらかそうってかこのマセガキ殺すぞ」
『子どもの教育上よろしくない言葉ばかりだなぁ』
「おまえこそ、下心で近づいてきてんじゃねぇよ!!」
「…………は?」
こいつと一緒に居たいなら、とっとと二人してどっか行っちまえ!
ズバリ爆豪の本心を言い当てた洸汰の怒鳴り声は食堂に轟き、大人達の視線を爆豪へと引きつける。
ヒクヒクと引きつった笑みを浮かべる爆豪を見て、向が無表情のまま、『ふっ』と息を漏らした。
「おいこらテメェ噴き出してんじゃねぇよ…!」
『いや…子どもながらに感心した』
はっはっは、と笑ってまったく動じない向に爆豪が鬼の形相を向ける。
洸汰はさっさと立ち去ろうと朝食をかきこみ、残すは牛乳だけ、となった時。
ピタッと動かなくなった。
彼は、厨房の方で忙しなく朝食の準備を進めているマンダレイへと視線を向けたあと。
「……。」
次に、ぎゃんぎゃんと目の前で吠えている爆豪と、それを軽くいなしている向に視線を向けた。
『なんでそんなにキレやすいかなぁ…カルシウム足りてないんじゃない?』
「テメェが一々ムカつかせるようなことするからだろ!!」
『そんなピンポイントで爆発スイッチ狙ってるつもりないんだけど。あぁ、ちょうどいいから牛乳貰いなよ』
「いらねぇわ!!!」
『えー』
牛乳の入ったグラスを向が手に持って、爆豪に差し出した。
テメェが飲めや!!!という謎の切り返しに向はコクリと頷いて、一気に牛乳のグラスを空けた。
「飲んでんじゃねぇよ!!!」
『いやお腹すいたから。飲めって言ったり飲むなって言ったりどっちなの』
向は困った顔をして、洸汰の朝食のトレーにグラスを戻した。
狼藉を働き続ける彼女に洸汰がどんな反応をするのかと爆豪がジッと彼を見つめ、「…フン」と鼻を鳴らして食器を片付けに行く彼を確認し、「やっぱただのマセガキじゃねぇか…!」と怒りを露わにした。