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風向きが変わったら【ヒロアカ】

第75章 一文字異なる




考えて、考えて。
ようやく出した、一つの結論。
それは。


「…なんか、振られたら諦めついた」


友達を大切に思う、「自分らしく」在る為に。
爆豪のライバルでいようとするのはもうやめる。
向の一番になろうとするのも諦める。
友達を応援する。
それだったら、多分。
一番俺らしい選択。
一番、後悔しない選択。


(…向からしてみたら、こんな最低な告白はねぇよな)


勝手に告げられて。
勝手に答えを決められて。
勝手に遠ざかっていく友人を、彼女は困ったように笑って、叱ることも詰ることもせず。
ただただ、わかったよ、と許容した。


「あ、もう補習行かねぇと!じゃあな!」


そう言って、階段を登りきって。
爆豪の横を駆けていこうとした俺の胸ぐらを、爆豪が掴み。
ふざけてんじゃねぇぞ、と低く一声吐いて、狼狽える俺の右頬をぶん殴ってきた。


「…っい…てぇな、何すんだよ!!」
「クソモブ野郎が、舐めてんのか!!」
「…舐めてはいねぇよ」


甘ったれてんじゃねぇよ!!!
そう怒鳴り散らしてくる爆豪に、俺は息を飲んで。
言葉を返すのが一瞬遅れた。


「…甘える要素がどこにあんの?」
「黙れやヘナチョコ、二度と俺の心配なんかすんじゃねぇ!!!」
「心配じゃねぇ応援だって!」
「どっちも同じだろうが!!!気ィ引けるくらいなら最初から俺にガン飛ばしてきてんじゃねぇ!!羨ましそうに見てきてんじゃねェよ!!うぜェんだよ、プールに来いっつったり行けば行ったで帰って欲しそうな顔してみたり!!!」
「…………!」
「てめェがあいつを好きだろうがなんだろうがどうだっていい興味ねぇ!けどな…!てめェに同情されなきゃいけねぇほど、俺は落ちぶれちゃいねェんだよ!!!」


だから、と言葉を切って。
爆豪は俺の胸ぐらを掴み、ブチギレた。


「遠慮なんかしてんじゃねェ!!!」


いつものように声を荒げる爆豪を見て。
俺は。
きっと、今。
爆豪は、爆豪自身の為じゃなくて。
俺の為に怒鳴っているんだろうなぁ、なんてことに気づいてしまった。



(……あぁ、俺……)



遠回しに、「俺に気を遣って諦めるな」なんて言っているつもりかもしれない友達の言葉。
そんな意図に気づいていながら。
俺は、ぼんやりと考えた。


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