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風向きが変わったら【ヒロアカ】

第8章 キミに近づきたい




『とっ、友達になってくれないかな!』
「死ねクソモブ女」


はぁ、と深くため息をついて、向が爆豪の手を振り払おうとする。
なんだかその態度が癪に触り、意味もなくその手首を掴んだままにすると、向はキッと爆豪を睨みつけてきた。


『ちょっと優しくしてすぐ突き放すんだもんなぁ、人の純情踏みにじるなよ!』
「てめェが言うセリフかよ…!省みてねぇのはどっちだおいコラ…!」
『え?ちゃんと伝わるように話してよ』


期待して損したわ!!と最大限にわかりやすい言葉を選んだ爆豪だったが、『思春期男子の期待に添えずすみません』と大して深読みすることなく向が言葉を返す。
その態度を受けて、額を片手で押さえながら歩き始めた爆豪。
向は諦めきれないのか、少し眉を八の字にしたまま後をついてくる。


「…疲れた、ついてくんな」
『ねぇ、友達どうこうよりまずさ、今日のこと謝りたい』
「…あ?」
『ごめん、足引っ張って』


爆豪は向を眺めた後、てめェは関係ねぇだろ、と小さく呟いた。


『勝己は出久に勝ったのに、ごめん』
「黙れや」


ギロリと睨みつけられて、向は少し俯いた。
そのままの体勢で歩いていると、また爆豪が話しかけてきた。


「待てや、俺が勝ったって?」
『…え?うん』
「……てめェにはそう見えたってことか」
『うん。総合しても、戦闘力だけで見ても』


訓練としては残念だけど。
と、向は笑い、駅の改札を抜ける直前、爆豪に手を振って、また明日、と別れの挨拶を口にした。


「……ッおいクソモブ女」
『…?』


向を引き止めた爆豪が、とても言いにくそうにしているのを見て、向は『なぁに?』とその先の言葉を促した。


「……てめェの」
『…うん』


てめェの、名前教えろ。
同じクラスで、席が隣の、これだけ言葉を交わした仲にも関わらず、そんな質問をしてくる爆豪。
それは言いづらいに決まってるわ、と向は笑って、答えた。


『深晴だよ』
「……。」
『じゃあね、また明日!勝己!』


嬉しそうに手を振って、人混みに消えていく彼女。
爆豪はその姿が見えなくなるまでその場に立ち尽くし、そして。


「……深晴」


と、呟いた。

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