第9章 お忘れではございませんか
「昨日の戦闘訓練お疲れ」
戦闘訓練から一夜明け、次の日の朝。
HRの開口一番、相澤はクラスの生徒たちにコメントをした。
「Vと成績見させてもらった」
ヒーロー基礎学は、何人もの教師が入れ替わり立ち替わり担当する。
そのため、教師間で情報共有がされているのは当然といえば当然だ。
1組目に訓練を行った生徒たちからスタートして、一人ずつ手厳しいコメントをしていく相澤を見て、緑谷はハラハラとしながら自分の順番を待っていた。
「で、緑谷は腕ブッ壊して一件落着か。個性の制御…いつまでも「出来ないから仕方ない」じゃ通させねえぞ。俺は同じこと言うのが嫌いだ。焦れよ緑谷」
「っはい!」
「次、向は…まず…」
相澤はスッと息を深く吸い込んで、カッ、と目を見開いた。
「よそ見のしすぎ。集中力なさすぎ。何も考えがなさすぎ。触れられたら宙に浮かされて何も出来なくなるのは「麗日も一緒」の状況で、あえてそうしなかったのは2対1の状況に置いておけば麗日が無茶に飛び込んで来ないと踏んだからなんだろうが、2対1のあの状況でおまえが麗日を封じれば後は飯田に守備を任せて緑谷と爆豪の勝敗がつかないまま、タイムアップ。勝ちは確定だった。授業とはいえ戦闘訓練、戦う選択肢くらい当たり前、飛び込んできたら捕まえて止めればいいやなんて考えが甘い。極めつけは最後のよそ見だ。敵前でぼんやり空なんか見上げてたら次の瞬間、天に昇ることになるぞ。そんなに昇りたいのか?天空に」
『昇りたくないです』
「ならもっと頭使って考えろ。次あんな授業態度取ったら即除籍だからな」
『…』
「わかったら返事は」
『……はい…』
(((あの爆豪と緑谷よりもだいぶ言われた…)))
向本人もそこまでけちょんけちょんに言われるとは思っていなかったのか、プルプルと微かに震えながら、目に涙を溜めている。
さらに何人かの不手際が目立った生徒に声をかけ、相澤はようやく一息ついた。
「さて、HRの本題だ…急で悪いが今日は君らに…」
((何だ…また臨時テスト!?))
ゴクリと唾を飲み込む生徒に向けて、相澤は言い放った。