第75章 一文字異なる
友達面しておいて、全然友達なんかじゃない。
こんなの、友達なんて言わない。
友達だなんて、言えない。
でも、どうしたらいいかわからない。
爆豪の個性が羨ましくて。
爆豪の立場が妬ましい。
全部、全部。
なんで俺じゃないんだろって思って。
あぁ、そっか、こんな嫌なこと考える奴だからかって。
いつもいつもそう思っては、勝手に自己嫌悪した。
『………えっと』
目を見開いていた向は、まだ状況が飲み込めないのか、呆然と。
ありがとう、と呟くように返事を返し。
どうしたらいいのかわからないと言うように。
視線を足下に落とし、口を一文字に結んだ。
「…好きなんだけどさ」
『…え?』
「俺あんま器用じゃないじゃん。見たろ、あのジャガイモ。どんどんボッコボコになってったの」
『………ジャガイモ?なんで今ジャガイモ』
「だからさ、不器用なんだよ。もう最近とか、体育祭も心残りばっかだし、職業体験ですらヘトヘトになるし、テストは赤点だわ補習だわ……全然、余裕ない。そのせいで、らしくないっつーかさ。爆豪とおまえ見てるとスゲェイライラするし」
『えっ、なんかごめん』
「そういう意味じゃねぇって。それで、頼みがあんだけど」
『えっ、あっ、はい』
「俺のこと、振ってくれ」
『…………………は?』
急に、好きだと言ったり。
かと思えば、振れと言ったり。
きっと、向にとってはわけがわからなかったことだろう。
(……おぉ、結構ずっしりくるな)
好きな女子に告ったことなんて、初めてだった。
好きな女子に、面と向かって振られたことも。
思ってたより、本当に胸が痛い。
「心」なんて目に見えないものが、しっかりとそこにあるように。
ひどく苦しくて、息がしづらい。
けど、自分が望んだだけのこと。
向は俺に頼まれたことをしてくれただけだ。
(……痛ぇな)
泣きたくなるほど胸が痛い。
けど、これで良かった。
これで、ようやく