第75章 一文字異なる
ーーー合宿二日目、AM5:30
「今日から君らの個性を伸ばす。死ぬ程キツイがくれぐれも…死なないように」
そう忠告した担任の言葉通り、合宿二日目にして訓練場は阿鼻叫喚。
至る所から叫びや怒号が飛び交い、目の前に広がるA組総勢21名の地獄絵図に、ブラドキングに連れてこられたB組生徒達は顔面蒼白になった。
「クソがぁああ!!!」
合宿初日から溜まりまくった鬱憤を発散させるかのごとく、熱すぎる熱湯に耐え、手を引き抜いては最大火力での爆破を繰り返している爆豪が怒鳴る傍ら、轟がドラム缶風呂に浸かりながら、同じく火炎と氷結を繰り返す。
「Y EEEAAHHァアアアア!!!」
まるで隔離されるかのように、高電圧バッテリーと共にそびえ立つ崖の上に放置された上鳴は、バッテリーとの通電を繰り返し、高らかな叫びを訓練場に響かせ続ける。
B組生徒の顔が恐怖に染まっていくのはお構いなしに、虎が緑谷の担当へと舞い戻った。
「さァ今だ、撃って来い!」
「はっ!5%デトロイトスマァァッシュ!!」
「よォォしまだまだキレキレじゃないか!!」
プッシーキャッツが一人、ゴリゴリの武闘派担当虎が教官を務める「我ーズブートキャンプ」でひたすら筋トレをこなしていた緑谷。
虎は後から来たB組へ「殴る蹴るの暴行」担当だと自己紹介していた言葉に偽りなく、軸がブレずに右の突きを繰り出して来た緑谷を評価するどころか、「筋繊維が千切れてない証拠だよ!」と躊躇いなく彼の左頬にキャットパンチをお見舞いする。
およそキャットなんて可愛い威力ではないマッチョからの右フックをまともに食らった緑谷は、地面へと倒れ込んだ。
そして。
林間合宿に来る前、「一緒に戦う」と、向と約束した時のことを思い出した。
(ーーーオールマイトから)
身に余る「個性」を授かった。
グラントリノから、身体に見合う使い方を教わった。
全部、貰ってここまで来た。
ここからは、正真正銘。
(僕の頑張り次第!!そうだ、なんとしてでも!!)
彼女に、追いつく。
「うぉおおお!!」
「よおおし伸ばせ千切れヘボ個性を!!」
イエッサー!!
と叫ぶ緑谷のすぐ近くを、ものすごいスピードで駆け抜ける飯田と一緒に、向が飛び抜けて行った。