第73章 君の原点
今さら、告白?
ふざけんじゃねぇぞ
(…んなもん、もうとっくに終わってるわ…!)
街中で偶然彼女を見かけた日。
切島と上鳴は知らないが、爆豪は既に彼女に気がある発言をして『ごめん、大切な人がいるから』という残念な返事を貰ってしまっている。
その後も彼女が爆豪を避けないのをいいことに、おまえを寄越せと何度人知れず口説いてみたことか。
梅雨時期の放課後。
泣きじゃくる彼女を抱きしめて、少し二人の関係が縮まるかと思いきや。
自分でも笑ってしまうほど、それ以来何も進展していない。
完全なる親友ポジション、嫌じゃないが特別嬉しくもない。
(何でだ………!!!)
テスト期間中。
あれほどいい感じだったのに。
チャンスは今しかないと分かってはいたのに。
俺にしとけ、なんて簡単な口説き文句ぐらい言えれば良かった。
正直な話。
自分から女子にアプローチをかけた経験なんて皆無だ。
中学の頃まではその気がなくとも勝手に向こうから寄って来たし、気がある素振りを見せれば、どんな女子だって簡単に手に入った。
けれど、彼女はそんな簡単な計算ぐらいで爆豪の手に入る気配は微塵も見せない。
出方を悶々と考えているうちに彼女は勝手に元気を取り戻し、また爆豪からのどんな誘いにも首を横に振り続けるようになった。
林間合宿先へと向かうバスの中。
やたら彼女が爆豪の方を向いて、話しかけてくるから。
危うく勘違いしそうになった。
バスが走り出して10分ほど経った頃。
あからさまに、通路側へ背を向ける彼女に気づいてしまった。
だから、ようやく理解した。
どうして、彼女が爆豪に迫られたところで、少しも狼狽えることがないのか。
どうして、彼女が轟だけを意識して避けるようになったのか。
それは前向きな解釈などしようもない、一つの事実。
バスで彼女が爆豪の隣に腰掛けるようになったのは
彼女に、爆豪を選ぶ気なんてサラサラ無いからだ
どういうわけか、轟を選ぶわけにいかない彼女が
それでも惹きつけられ続けている彼を
視界から追い出そうと躍起になっているからだ