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風向きが変わったら【ヒロアカ】

第71章 似た者同士




『……おぉ、さっぱりした』


むくりと上半身を起こした彼女が、じっと洸汰を、揺れる瞳のまま見つめてくる。


「お、まえが聞かれたことに答えないからだろ!」
『ははは、警察みたいなこと言うなぁ。これから答えようと思ってたんだって』


で、なんだっけ?
首をかくりと傾げた彼女に、洸汰が「バカかよ!!」と躊躇いのない言葉の暴力を振るう。


『あー、そうそう。なんでヒーローが嫌いなのかって?別に嫌いじゃないよ、好きじゃないってだけ』
「一緒だろ!」
『違うよ。嫌いって言い切ることと、好きじゃないって許容するのは。……あぁ、なんだろう。なんて言えば分かりやすいかな。キミのことはよくわからないけど』


キミの、保護者と。
ただの、ヒーロー。


『片方は「嫌い」で、片方は「好きじゃない」んじゃない?そんな感じだよ』
「……。」
『日本語って難しいよね。今でもうまく使えてるのか不安になる』
「…なんの話だよ、身体起こせんならとっとと飯食え」
『起こせるけど歩きたくないな』
「……。」


不服そうな顔をしたままの洸汰からずっと視線を外さずにいた向が、ようやく視界が落ち着いてきたのか、『おや』と意外そうな声を出した。


『まだ何か答えていなかったっけ……あぁ、そっか。なんでって聞かれてたな。……子どもに話すことじゃないけど、子どもの頃ヴィランに襲われて』
「……ヒーロー関係ねぇじゃん」
『あるある。そのヴィランに私は家族を壊されたんだけど…アメリカのヒーローっていうのは日本のヒーローとは段違いに腐っててね。それ相応の報酬がなきゃ動いてくれない。報酬っていうのはお金のことね』


洸汰が知らない、アメリカのヒーロー達の話を。
向は髪から水を滴らせながら、軽い笑みを浮かべたまま話した。
公務員のように、日本のプロヒーローたちへの給料は貢献度やヴィラン検挙率に比例し、国から与えられるものとなっている。
日本とは違い、アメリカのヒーロー社会は、国からの給料に上乗せする形で、依頼主の一般市民からも依頼金が支払われる。
日本のプロヒーローが前時代の警察的役割を果たしているのに対し、アメリカのプロヒーローは現代の弁護士や医者など依頼主がつく職業と似ている。

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