第71章 似た者同士
緑谷の視線の先。
そこには大人達と距離を取り、棒立ちしたままの少年がいた。
「ああ違う、この子は私の従甥だよ。洸汰!ホラ挨拶しな、一週間一緒に過ごすんだから…」
マンダレイに手招きされようが、その指示を無視して突っ立ったままだった洸汰の元に、緑谷がテッテッと駆け寄っていく。
直後。
礼儀正しく片手を差し出し、自己紹介をした緑谷の股間へ向けて、洸汰の拳が叩き込まれる。
きゅう、と変な鳴き声を発して倒れこんだ友人を心配し、飯田が「緑谷くん!」と駆け寄っていった。
「ヒーローになりたいなんて連中とつるむ気はねえよ」
「つるむ!?いくつだ君!!」
歳相応とは思えないその口ぶりと、顔を真っ青にして倒れこんだままの幼馴染を見やり、爆豪が「プッ」と声を出して笑った。
「マセガキ」
「お前に似てねえか?」
「あ?」
背後から話しかけてきた轟に般若の形相をした爆豪がグルンと振り返り、「似てねえよつーかてめェ喋ってんじゃねぇぞ舐めプ野郎」と一息で反論した。
「悪い…にてる…」
『似てる』
「あ!?」
『仲良くなれる気がするよ』
そう言った向は急にしゃがみこみ、後頭部を叩いてツッコミをいれようとした爆豪の攻撃を奇跡的にかわした。
「よけんな!!」
「向、目眩大丈夫か?」
膝を畳んだ向の隣。
爆豪を押しのけるように切島が駆け寄ってきて、向の肩を支えた。
「………」
『一気にきた…世界が私を中心に回っている…』
「すげえ自己中っぽい感じになってるぞ、しっかりしろ」
甲斐甲斐しく世話を焼く切島を見て、爆豪が額に青筋を浮かべた。
「バスから荷物降ろせ、 部屋に荷物を運んだら食堂にて夕食。その後入浴で就寝だ。本格的なスタートは明日からだ、さァ早くしろ」
向以外にも、腹痛や吐き気に限界を迎えつつある生徒たちを見て、相澤は指示を出し、生徒たちに合宿所内へと移動を促す。
「そのキティ大丈夫?歩ける?」
『歩けますんでお気遣いなく』
「いや、厳しそうだろ。何見栄張ってんだ」
「おっ強気なキティだ!じゃあ食堂まで自分の力でたどり着いてね!!」
『………。』