第71章 似た者同士
しれっとした顔をしている爆豪と、体が埋もれたまま頭だけ土の山からひょっこりと顔を出している上鳴の目が合った。
「この人でなし!!やっぱり男はみんな友情より彼女かよ!!」
「生きてたんかアホ面」
「こんな何の見せ場もなく死ねるか!!深晴からとっとと手ェ離せ!!!」
「るせぇ黙って死ね」
未だ震えている向の肩を、その肩を抱いたままの爆豪がジッと見下ろす。
向は申し訳なさそうに『ご迷惑をおかけしました』と謝ると、彼の胸をそっと押しのけた。
「…おい」
『…なに?』
「……。」
さっきの、と爆豪が言及しようとした時。
頭上の広場から、マンダレイの声が響いた。
「私有地につき個性の使用は自由だよ!今から三時間!自分の足で施設までおいでませ!!この…魔獣の森を抜けて!!」
土から這い出してきた生徒達が、目の前に広がっている薄暗い森へと視線を向けた。
「魔獣の森…!?」
「なんだそのドラクエめいた名称は…」
「雄英こういうの多すぎだろ…」
「文句言ってもしゃあねえよ」
行くっきゃねぇ、と誰かが諦めの一言を発した時。
人間としての尊厳を諦められず、強烈な生理的欲求に耐え続けていた峰田が一目散に森へ向かって走り出す。
「耐えた…オイラ耐えたぞ…!」
木陰に隠れて尿意とサヨナラしようと、峰田が隠れ場所を探そうと顔を上げた時。
そこには確かに、「魔獣の森」と呼ぶに相応しい、魔獣と森が、目の前に存在していた。
「……あっ」
「「マジュウだーーーー!!?」」
小さく呟いた峰田の背後、口田が進み出て声を張った。
「静まりなさい獣よ、下がるのです!」
動きを止めることなく、前足を振りかぶった魔獣の姿に、五人の生徒が飛び出した。
森に響く破壊音と、立ち昇る土煙。
高みの見物を決め込んでいたプロヒーロー達が視線をやり、その三人に混ざって森へと視線をやっていた出水洸汰は、子どもらしからぬ表情を浮かべたまま、恨めしげに呟いた。
「……下らん」