第71章 似た者同士
広場から投げ出され、落下していく自分の身体の感覚に多くの生徒達が叫び出す中。
舌打ちをしながら空中で体勢を立て直す爆豪のすぐ近く。
一人だけ、異質な叫び声をあげる生徒がいた。
(……この声…?)
聞き馴染みのあるその声に、爆豪はハッとして周囲を見渡す。
彼が「異質」だと感じたその理由は、彼女が今までそんな風に激情を声に含ませることなど皆無だったからだ。
『あぁあああぁああああ!!!』
「…あ?おいコラふざけてんのか」
楽しんでいるには、明らかに一人異質な程大声で叫びをあげる向を、爆豪がぼんやりと眺めて。
地面へと頭から落下していく彼女の目に恐怖が滲んでいることに気づき、怒鳴った。
「おい深晴!!個性使え!!!」
『…っ!?』
ハッとした彼女は演算をする為か、自分の目をぎゅっときつく閉じた。
恐怖心で頭が回らないのか、スピードを上げて落下していく向を、宙を飛んできた爆豪が抱え込む。
「…っおい!バカテメェ…っ!」
『ごめ……ごめん』
『ごめんなさい、お父さん』
爆豪の腕の中。
彼女がそう呟いたのが、はっきりと聞こえた。
「……は?」
「爆豪ぉおおお!!!」
助けてぇええ!!と泣き叫びながら、爆豪の背後で、自身の個性では地面との衝突を避けようがない上鳴が落下していく。
自身を呼ぶ声に一度振り向き、ガン無視することを決めた爆豪が、ぼんやりとしたままの向の名前を呼んだ。
「おい深晴!!寝ぼけてんのか、とっとと個性使え、片手じゃ俺まで落ちんだろが!!」
『………っあ……』
「どこ見てんだ、おいコラ!!!」
焦点が定まらない彼女に、爆豪が躊躇いなくゴッと頭突きをする。
『うぐっ、いった……』
「ボケッとしてんじゃねぇよ、下見て計算出来ねぇなら見てんじゃねぇ!!!」
俺を見てろ!!!
向の胸倉を掴み、発せられたその言葉に。
彼女はハッとして、自分の現状をようやく把握したのか、冷や汗を額に浮かべ、演算を始めた。
ズドドド、と土砂崩れと共に崖下へと転落したクラスメート達に混ざって。
どさくさに紛れてなぜか向を抱きしめている爆豪が、ゆっくりと着地した。