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風向きが変わったら【ヒロアカ】

第68章 後の祭り




「深晴」
『わっ』


背後から向の肩を叩いた轟に、向がビクッと肩を震わせた。


「……悪い」
『あぁいや大丈夫』


なんだか落ち着かない様子の彼女に、轟がさっきの話の続きを待ちかけようとした時。
爆豪が向の手を掴み、自分の背へと向を隠してしまった。


(………。)


その様子を見て、轟が眉間にしわを寄せた。
爆豪は軽々しく、彼女に触れている。
付き合っていないはずなのに。


(………なんでだ)


確実にイラついている轟に爆豪が引かず、睨み合いが始まった。
向は気まずそうに困った顔をして、「大変な」と労ってくれる切島に視線をやった。


『…今日は男子いないって話じゃなかった?なんでこんなに気づけば勢揃い』
「向効果じゃね?にしたって爆豪連れ出すの時間かかったけど」
『私効果って何?』
「向ってさ」


本当に彼氏いないのか?
オレンジジュースを飲みながら、視線を外して切島が問いかけてくる。
喧嘩しない、と二人を諌めていた向が『なぜ急に』と振り返った。
その話題に興味を持ったのか、向が止めても殺気立っていた爆豪と轟が切島に視線を向ける。
切島はさも興味なさそうに、オレンジジュースの成分表を眺めながら向に質問を投げかける。


「彼氏いないのに、爆豪とか轟になびかないのってなんで?他の人が好きとか?」
「あァ!?なびいてるわクソ髪野郎!!」
「なびいてねぇから言ってんだろ、おまえは少し静かにしとけ!!」
『彼氏いなくても押されたら落ちるタイプと押されても落ちないタイプいるよね』
「押しに弱いだろ、おまえ」


ピンポイントで図星を突いてくる轟を向が一瞬振り返り、数秒目を合わせた後。
『3組目は誰が勝つかな』と彼女はまた視線をプールに戻した。
八百万が笛を吹き、3組目が飛び込んだ瞬間。
ほとんどのクラスメートの視線がプールへと向かう中。









彼女との会話の最中。
雫が滴る手元の空き缶を眺めていた切島だけは、向の横顔をじっと見上げていた。







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