第67章 フライング夏休み
「爆豪くん、危険な飛び込みはやめるんだ!!」
「深晴ちゃん大丈夫だった!?」
「え、地味に楽しそうじゃね今の」
「あいつら仲良いんだか悪いんだか」
ガバァッとプールに小さな波を作り、向が爆豪に「水かけ」なんておよそ可愛い規模とは言えない攻撃を仕掛ける。
迫り来る波を爆破してかき消した後、水面で爆豪が両手から爆発を起こし、ドドドドドと絶え間なく向に向かって水をぶつけ続ける。
『うわぁあ計算させないのは卑怯だぁあ』
「先にぶっかけてきやがったのはてめェだろ!!」
『息できない、溺れる溺れる』
「とっとと溺れろ!!」
『シャレにならない!!!』
ごめんなさいと謝った向にようやく爆豪が攻撃の手を緩め、背を向けた後。
後ろから向が爆豪の両肩に体重を乗せ、水中へと彼を沈めた。
一瞬で顔を水中からあげた屈強な彼はイラッとした顔を隠さず振り返り、バタ足で逃げていた向の足首に飛びついて引っぱり戻した。
「おいコラ」
密着する形で背後から首に腕を回され、捕獲された向に爆豪が普段より数段低い声色で囁く。
「俺にちょっかい出しといて逃げられると思ってんのかブッ殺すぞ」
『殺さないでください…!』
「許してくださいだろ、なぁ?危ねぇよな、背後から人沈めたりしたらよ?」
『仰る通りです誠に申し訳ございません』
「もっかいぶん投げてやろうか?」
『それは…実はちょっと楽しかった』
プールサイドにあがってきた二人を見て、周りのクラスメートたちが安心した矢先。
また爆豪が向を抱え、プールに投げ込んだ。
「まだ喧嘩してたの!?」
「いいなー深晴、爆豪私も投げて!」
「うわっはー私もー!」
「爆豪俺も!俺も投げて!!」
「るっせぇ黙れや、勝手に飛び込んでろ!!!」
「轟、そろそろ氷溶かしてくんね…?海パン下げようとしたことは謝るからさ…」
「ようやく自白したな」
轟が上鳴の氷を溶かす為、向を見つめていた視線をようやくそらした。
乱暴の限りを尽くされておきながら、なぜかニヤニヤとしている向に蛙吹が気づき、「深晴ちゃんのリクエストだったのね、本当に仲良しね」とコメントした。