第67章 フライング夏休み
「向ちゃーん行くよー!」
『まかせろ』
とりゃーっと葉隠が読めない軌道で腕をスイングし、ビーチボールでサーブを打ってきた。
どこを狙っていたのかわからないほど風に煽られ、宙を舞ったビーチボールは一人の男子生徒の顔面に直撃する。
「「「「『あ』」」」」
「…………。」
足下に転がったビーチボールを、ガッと鷲掴んだ被害者の顔を確認し、女子たちは((((爆破される))))と今日一日一緒に過ごすはずだったボールの避けられない寿命を確信した。
『勝己おはよー、ぶつけてごめん』
「ていうか、えっ、爆豪来たの!?」
「わぁたしかに!珍しいね!」
「深晴ちゃん効果絶大ね」
「はよー切島!来るの遅かったじゃん!」
「……おー!おはよ、皆!」
プールサイドにあがり、ビーチボールを回収しにきたらしい向を眺めた後。
爆豪はポイッとボールをプールに浸かっている女子たちの方へと投げた。
『あれ。私に渡してくれればいいじゃん』
「おいコラ、てめェ何が予定入れたくねぇだ完全に遊んでんじゃねぇか!!」
『ハーン?幸せ一杯の女子の楽園に参加できる機会があれば誰だって予定入れるだろうが!!』
「この変態女…!俺との約束はする価値ねぇってのか!!」
『ハードルの高さを考えて。電気と鋭児郎入れて四人ならいいよ、むしろお願いします』
「つーかなんだそのダッセェ水着は!!」
『いやこれしか私持ってないし。みんな合わせてくれただけだからあんまり強く言わないでよ。学校のプールでスク水着て何が問題あるの』
「期待して損したわ!!!」
『期待すんな変態野郎』
顔を合わせて開始五分。
両手を爆破させ始めた爆豪に、向が個性で水をぶっかけた。
『…ふ…っ』
「………。」
瞬時にびしょ濡れになった爆豪がわなわなと震える。
クス、と口元に手を置いて笑っていた向に歩み寄った爆豪は、向の腰を抱え込み、プールへとぶん投げた。
「「「「『わぁあああ!!』」」」」
投げ込まれた本人と、それを目撃していた生徒たちが驚愕の声を上げる。
水しぶきをあげた地点から向がイラついた顔で浮かび上がり、個性を使ってクンッと爆豪を引き寄せる。
直後、彼も向と変わらない速度でプールへと落下した。