第67章 フライング夏休み
「悪く、はないと思うけど…ごめん、僕は結構女子なら許せちゃうかも…」
「………………。」
「いやでも仕方ないと思う!!轟くんが間違ってるとかそういうことじゃないと思うし!!」
「…庇わなくていい」
やっぱ、少し変なんだな。
そんな自虐を吐いて、轟はジュースの缶に口をつけた。
何やら考え込んでいるらしい轟に、緑谷は問いかけた。
「…あ、のさ…今日来てくれたのってやっぱり、向さんがいるから?」
「……あぁ」
(…やっぱりそうだよねぇ…)
聞かなくとも、何となくわかっていた気がする。
意外と遊び好きな彼がクラス総出のショッピングには興じず、飽き飽きしているはずの訓練目的の集まりには来る理由なんて。
休みの日も彼女に会える。
それだけのこと。
けれど、それは彼にとっては大問題で。
緑谷がここに赴いた理由の一つでもある。
ーーー考えておく
そう言って、答えを保留にした彼女が、今は普通の学生たちと何ら変わりなく水遊びを楽しんでいる姿を見て、緑谷は少しほっとした。
(…楽しそうだなぁ)
オールマイトから、オールフォーワンの話を聞かされた後。
正直、恐ろしくて何日も落ち着かなかった。
オールマイトがそばに居てくれるから、なんとか心の平穏を保っていられた。
これは、仮定でしかない。
もし、オールマイト並みの力を求める彼女がなんらかの理由で巨悪を見据え、戦う意思を固めるに至る背景を隠しているのなら。
ワンフォーオールの秘密を、彼女に隠したままでいいのだろうか。
オールフォーワンを知っているのかと、聞かずにおいていいのだろうか。
彼女が知らなかった時の事ばかり考えて。
もしそうなら、秘密を明かすわけにはいかないと、いつもいつも口を噤む。
けれど最近、そのままでいいのかと考える自分がいる。
彼女がオールフォーワンの脅威を知っていて。
その上で力を求め。
復讐に向かっているのだとするなら。
オールマイトと自分だけの秘密を明かしてでも、気が急いている彼女を引き止める必要がある。
自分は何も明かさないくせに、彼女に話してほしいとばかり願っている。
彼女の重い口を開かせるには、友達同士の距離では足りないのだろうか
どうしたら、彼女の